問い合わせの少ない中小企業のSEO対策事例に学ぶ、良質な相談が増えた理由

この記事では、検索からの問い合わせがほとんど無かった中小企業が、強みを言葉にし、疑問に答える記事と社長の発信を重ねて相談を増やした経過を、私たちSEO Note! Teamがお伝えします。実在の会社ではなく、複数の取り組みを再構成した金属加工の町工場のモデルケースです。強みは「なぜ取引先がほかの会社に切り替えずに頼み続けてくれているのか」から聞くと見つけやすく、相談は数より先に中身が変わりました。広告費も専任の担当者もかけられない会社が、最初の一手を決めるときに役立ちます。

ホームページは何年も前に作ったままで、問い合わせフォームに届くのは営業のメールばかりです。新しい仕事は、付き合いの長い取引先か、知り合いの紹介から入ってきます。そんな状態のまま、いまからSEO対策に手間をかける意味があるのかと迷っている社長もいるでしょう。金属加工の町工場も、最初は同じところにいました。

中小企業のホームページに、検索からの問い合わせがほとんどありませんでした

この町工場は、ステンレスやアルミなどの金属を削って部品を作る、切削加工の会社です。社員は二十人ほどで、先代が始めた工場をいまの社長が継いでから十年ほどになります。仕事の大半は、長く付き合いのある数社から届く量産部品の加工でした。図面と数量が決まった状態で注文が来て、決められた納期に納めるという流れが、先代の頃から続いていました。

社長が気にしていたのは、その取引先からの注文が年を追うごとに読みにくくなっていたことです。主要な取引先の一社が生産の体制を見直し、この町工場に回ってくる部品の数が大きく減った年がありました。特定の数社に頼る仕事の取り方をこのまま続けてよいのかと考えるようになった社長は、これまで取引のなかった会社から、新しい相談を受けられる入り口を持ちたいと思い始めます。

入り口として真っ先に思い浮かんだのがホームページでした。ところが、そのホームページは十年近く前に作ってもらったきりで、中身は会社概要と保有している機械の一覧、工場の地図、問い合わせフォームだけです。トップページには「高精度」「短納期」「高品質」という言葉が大きく並んでいましたが、どんな部品を、どんな相手から、どれくらいの数で受けているのかは、どこにも書かれていませんでした。

会社概要と機械の一覧だけが並ぶ町工場の古いホームページに、高精度・短納期・高品質という大きな文字が表示されているパソコンの画面と、その横に並ぶ「どんな部品?」「誰向け?」「何個から?」という吹き出し

それまでホームページが後回しになっていたのには、理由があります。仕事はずっと既存の取引と紹介で回っていたため、ホームページは名刺に載せる連絡先の一つのようなもので、そこから仕事が来るとは社内の誰も考えていなかったのです。更新の担当も決まっておらず、機械を入れ替えても一覧はそのままになっていました。

実際、問い合わせフォームから仕事の相談が届いたことは、社長の記憶にある限りほとんどありません。届くのは広告や人材紹介の営業ばかりで、社員もフォームの通知を開かずに消すのが習慣になっていました。たまに仕事らしい相談が混じっていても、営業のメールに埋もれて返事が遅れることがありました。

Google Search Consoleを設定し、どんな言葉で検索結果に表示されているのかを確かめると、状況がはっきりしました。表示されていたのは、ほとんどが社名での検索です。この町工場の名前をすでに知っている取引先の担当者が、住所や電話番号を調べるために使っているだけで、加工の相談先を探している人の目には、ほとんど触れていなかったのです。

Search Console ヘルプの検索パフォーマンス レポートの概要ページ。サイトがどのような検索クエリで検索結果に表示されやすいかを把握できるという説明

社長は試しに、自社が得意とする試作の加工を表す言葉で、自分でも検索してみました。検索結果に並んだのは、ほかの地域の加工会社や、多くの工場をまとめて紹介するサイトばかりで、この町工場のページは見当たりません。得意な仕事を探している人がいても、この町工場にはたどり着けない状態だったことを、社長はこのとき初めて自分の目で確かめました。

社長は当初、ホームページのデザインを新しくすれば問い合わせが来るのではないかと考えていました。けれども、見た目を整えても、何を頼める会社なのかが書かれていなければ、検索でたどり着く人は増えません。この町工場が最初に取りかかったのは、作り直しの見積もりを取ることではなく、自社のことを言葉にする作業でした。

自社の強みと届けたい相手を言葉にするところから始めました

自社の強みは何かを考えたとき、社長がまず挙げたのは、ホームページにも書いてあった精度と納期でした。ただ、精度の高さや納期の早さは、同じ加工を手がけるほかの工場も同じように掲げています。中小企業庁の2026年版中小企業白書でも、製造業の中小企業が他社との差別化で重視している要素は品質の高さが67.8%で最も多く、納期に関わる要素も上位に並んでいます。

出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第2-2-42図(製造業。資料: 帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」)

品質や納期を掲げること自体は間違いではありません。けれども、検索する側から見れば、どの会社も同じことを言っているように見え、ここに頼む理由にはなりません

ほかにも、先代から続く取引の長さや、古い機械を手入れしながら使い続けていることなど、強みの候補はいくつか挙がりました。ただ、どれも社内から見た誇りではあっても、初めて相談先を探す人が選ぶ理由になるかどうかは分かりません。そこで、候補を並べるだけでなく、実際の仕事の中から確かめることにしました。

社長と工場長、見積もりを担当する社員の三人で過去の仕事を振り返り、取引先から特に感謝された案件と、断った案件を書き出していきました。感謝された案件に共通していたのは、図面ができあがる前の段階で相談を受け、加工しやすい形を一緒に考えた仕事だったことです。角の丸みを少し変えただけで削る工程が一つ減った、穴の位置をずらしたら部品を二つに分けずに済んだ、といった提案が、取引先の設計者に喜ばれていました。

こうした提案ができるのは、社長の経歴によるところが大きいものでした。社長は家業を継ぐ前、機械メーカーで設計の仕事をしていました。図面を描く側にいた頃、加工の現場からこの形では削れないと図面を差し戻され、試作が遅れた経験を何度もしています。だからこそ、図面を受け取る側に回ったいまは、設計者がなぜその形にしたのかを先に聞き、意図を崩さずに作りやすくする方法を考えるのが習慣になっていました。社内では当たり前になっていたこの習慣こそが、ほかの工場との違いだったのです

断った案件からも、分かったことがあります。決まった形の単純な部品を大量に、できるだけ安く作ってほしいという相談は、量産向けの設備をそろえた工場のほうが、価格でも納期でも相手の期待に応えやすいと社長は判断しました。この町工場が無理に受けても、互いのためになりません。受けない仕事が見えたことで、受けたい仕事の輪郭もはっきりしました。

強みが見えてくると、届けたい相手も絞れます。この町工場が力を発揮できるのは、装置の開発や研究の現場で、試作の部品を一個から数個だけ作りたい設計者の相談です。量産の値段で比べられると大きな工場にはかないませんが、形がまだ固まっていない段階で相談できる相手を探している設計者にとっては、設計の事情が分かる社長がいることが、何よりの判断材料になります。

最後に、この強みと相手を、社外の人が読んでも分かる一文にまとめました。試作や小ロットの金属部品を、図面が固まる前から設計者と一緒に考えて作る町工場、という一文です。言葉にする前と後を並べると、次のようになります。

項目言葉にする前言葉にした後
掲げていた強み高精度、短納期、高品質図面が固まる前から、加工しやすい形を設計者と一緒に考えられる
届けたい相手ホームページのどこにも書かれていなかった装置の開発や研究の現場で、試作の部品を一個から数個だけ作りたい設計者
受けない仕事はっきりさせていなかった決まった形の単純な部品を大量に、できるだけ安く作ってほしいという相談

この一文が社外の人に伝わるかどうかは、付き合いの長い取引先の設計者に読んでもらって確かめました。業界の中だけで通じる言い回しは伝わりにくく、設計者が普段使う言葉に置き換えたほうが伝わることが、このとき分かりました。社内で話し合うことと、取引先に聞いてみることは、同じ白書の調査で、自社の強みや特徴を見つけるのに有効だった取組としても上位に並んでいます。最も多かったのは顧客・取引先へのアンケートやヒアリングで36.3%、社内でのディスカッションがそれに続きます。

出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第2-2-43図(差別化を重視している事業者が回答。資料: 帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」)

まとめた一文は、電話を受ける事務の担当者や工場の社員にも共有しています。ホームページに書いたことと電話口で説明することが食い違えば、せっかく相談してきた人を迷わせてしまうからです。この一文が、この後のタイトルの書き直しや記事の題材選び、社長の発信の軸になりました。言葉にする作業には数週間かかりましたが、ここを飛ばして見た目やキーワードから入っていたら、何を足しても、ほかの工場と同じことを言い続けるホームページのままだったはずです

SEO施策スタッフ
SEO Note! Team
SEO Note! Team
私たちSEO Note! Teamが強みの言語化に立ち会うときは、どこが優れているかより先に、なぜ取引先がほかの会社に切り替えずに頼み続けてくれているのかを聞くようにしています。優れている点は自社の目線で語られがちですが、切り替えない理由は相手の目線で語られるので、そのままホームページの言葉に使えることが多いからです。社内だけで考えると設備や品質の話に戻りやすいので、付き合いの長い取引先に一度だけでも聞いてみることをおすすめします。

検索されている言葉に合わせて、サイトの土台を整えました

強みと相手が決まったら、次はその相手が実際にどんな言葉で探しているのかを確かめます。社長と見積もり担当は、これまでに設計者から電話やメールで受けた相談の言い回しを思い出して書き出し、検索窓に入れたときに出てくる候補の言葉と照らし合わせました。すると、相談先を探す設計者の言葉には、次のように、数量や困っている状況をそのまま表したものが多いことが分かってきます。

  • 試作を一個から頼みたい
  • アルミを削り出しで少しだけ作りたい
  • 図面が無くても相談したい

一方、当時のホームページに書かれていたのは、精密機械部品加工や各種金属加工といった、業界の中で通じる呼び方ばかりでした。相手が使う言葉と、サイトに書いてある言葉がずれていたのです。

設計者が使う言葉と、サイトに並ぶ業界の言葉のずれを確かめるときは、サジェストキーワード取得ツールで、軸になる言葉を入れて Google の検索窓に出る候補をまとめて取り出すと、頭の中の想像ではなく、実際に打ち込まれている言い回しと照らし合わせられます。取得モードは「関連性の追求」と「軸キーワード+複合」から選べるので、たとえば「試作」を軸にして、数量や材料と組み合わせた言い回しがどれだけ出てくるかを見比べると、タイトルや説明文に入れる言葉の優先順位を決めやすくなります。

このずれを埋めるため、新しいページを次々に増やす前に、いまあるページのタイトルと説明文、そしてページの中身を、相手の言葉に合わせて直すことにしました。デザインやサイトの仕組みは大きく変えず、社内で編集できる範囲から手を付けています。費用をかけずに始められ、効果が出なかったときにも戻しやすいからです。

タイトルと説明文を検索意図に合わせて書き直しました

書き直す前のホームページは、どのページのタイトルも社名と金属加工という言葉を組み合わせた同じ文言で、説明文にも全ページで同じ会社紹介の文が入っていました。これでは、検索結果に並んだときに、どのページに何が書いてあるのかが伝わりません。

Googleの検索セントラルのドキュメントでは、検索結果に表示されるページの見出し(タイトルリンク)は、title要素のテキストやページの大見出しなど、複数の情報源からGoogleが自動で決めると説明されています。そのうえで、ページごとに内容を具体的に表すテキストを書き、同じ文言や定型文を繰り返さないよう勧めています。説明文(メタディスクリプション)についても、Googleは主にページの本文から検索結果の説明文を作り、メタディスクリプションのほうがページを適切に表している場合にはそれを使うことがあるとしたうえで、ページごとに固有の説明を書くよう勧めています。

Google 検索セントラルのタイトルリンクのドキュメント。検索結果のタイトルリンクの部分を枠で示した図と、Google がいくつかの異なるソースを使ってタイトルリンクを自動的に決定するという説明

この町工場では、トップページのタイトルに、前の章でまとめた一文の要点である試作、小ロット、金属部品という言葉を入れ、社名は後ろに回しました。試作加工の案内ページや、扱える材質のページにも、それぞれの中身を表す別々のタイトルを付けています。社名を後ろに回すことには社内で迷いもありましたが、社名で探す人はすでにこの会社を知っているので、社名がタイトルの後ろにあってもたどり着けます。説明文には、一個から相談できること、図面が固まる前でも相談を受けていること、見積もりを頼むときに何を用意すればよいかを、ページの中身に合わせて書き分けました。

ページの大見出しも、タイトルと食い違わないように直しています。先ほどのタイトルリンクのドキュメントでは、タイトルリンクを決める情報源として、title要素のほかに、ページに表示される大見出しやh1などの見出し要素が挙げられています。タイトルだけを書き換えて大見出しが社名のままでは、ページが何を扱っているのかがぶれてしまいます。見直す前と後の書き方を並べると、次のようになります。

<!-- 見直す前(どのページも同じ文言。社名は仮のもの) -->
<title>株式会社〇〇 | 金属加工</title>
<meta name="description" content="株式会社〇〇は、精密機械部品加工をはじめ各種金属加工を手がけています。">

<!-- 見直した後(トップページの例) -->
<title>試作・小ロットの金属部品加工 | 株式会社〇〇</title>
<meta name="description" content="試作や小ロットの金属部品を一個から加工します。図面が固まる前の段階でも相談を受けています。見積もりに必要なものはこのページでご案内しています。">

<!-- ページの大見出しもタイトルと食い違わないようにそろえる -->
<h1>試作・小ロットの金属部品加工</h1>

書き直してすぐに検索結果が変わったわけではありません。同じドキュメントには、こうした変更をGoogleが認識するにはページの再クロールと再処理が必要で、数日から数週間かかることがあるとも書かれています。この町工場でも、Search ConsoleのURL検査ツールで、書き直したページのインデックス登録をリクエストしたうえで、表示される言葉が少しずつ変わっていくのを数週間かけて見守りました。

Google 検索セントラルは、Google がサイト運営者に向けて検索の仕組みと推奨事項を公開している公式ドキュメントです。このページには、title 要素が部分的に空になっている、古くなっている、不正確である、マイクロ ボイラープレート テキストを含むといった、よく見られる問題と、それに対する Google 側の扱い方もまとめられています。

ページの情報を、知りたいことに答えられる形に増やしました

タイトルと説明文を直しても、開いたページに答えが無ければ、読んだ設計者はすぐに戻っていきます。見直す前の機械一覧のページには、機械の名前と台数が並んでいるだけでした。加工を頼みたい側が知りたいのは、機械の型式ではなく、その機械で何が作れるのかです。

そこで、機械ごとに、削れる部品の大きさの目安や、得意な形、扱える材質を書き足しました。あわせて、試作の相談を受けるときの流れを一つのページにまとめ、実際の打ち合わせで話している順番どおりに、次のことを書きました。

  1. 手書きのスケッチや立体の設計データだけでも相談できること
  2. 見積もりを出すまでに確かめること
  3. 急ぎの試作にどこまで応えられるか

材質のページでは、扱える金属の名前を並べるだけでなく、それぞれの材料で試作を頼むときに気をつけたいことを、社長の経験から書き添えています。同じ形でも材料によって削りやすさや仕上がりが変わるため、材料を決めかねている設計者にとっては、その説明自体が相談のきっかけになります。

悩んだのは、事例の載せ方です。取引先の部品には機密保持の約束があり、実物の写真をそのまま載せることはできません。この町工場では、取引先の了承が得られた部品だけを載せ、それ以外は、形を変えて自社で削った見本の部品を撮影しました。見本には、最初の図面ではどこが削りにくかったのか、どう変えて工程を減らしたのかという、提案の中身を添えています。部品の写真だけを並べるより、図面の段階から提案できるという強みが伝わるからです。

内側の角が直角で削りにくい部品と、角に丸みを付けて工程を1つ減らせる部品を「見直す前」「見直した後」として左右に並べ、その間に「図面の段階で相談」の矢印、下に自社で削った見本の金属部品を置いた比較図

受けない仕事も、はっきり書きました。決まった形の単純な部品を大量に、最も安く作りたいという相談には、量産向けの設備をそろえた工場のほうが向いていると明記したのです。受けられる仕事の範囲を正直に書いたことで、ページを読んだうえで届く相談の中身がそろい始めました

SEO施策スタッフ
SEO Note! Team
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タイトルや説明文を書き直したら、書き直した日と変更前の文言を記録しておくことを、私たちSEO Note! Teamは必ずお願いしています。検索結果に反映されるまでには時間差があるため、記録が無いと、数週間後に表示回数が動いたときに、どの変更が効いたのかを振り返れなくなるからです。ページの中身を足すときも同じで、誰がいつ何を変えたかを一枚の表に残しておくと、担当者が替わっても判断の根拠が残ります。

情報発信を止めず、検索されそうな疑問に答える記事を重ねました

土台を整えただけでは、検索で見つけてもらえる言葉は限られます。試作の相談先を探している設計者が、最初から加工会社を探しているとは限りません。その前に、この形は削れるのか、試作の費用はなぜ高くなるのか、といった疑問を調べている場合があります。その疑問に答えるページがあれば、相談先を決める前の段階で、この町工場の名前を知ってもらえます。

この町工場では、ホームページの中に、お知らせとは別の読み物の欄を作り、疑問に答える記事を少しずつ積み重ねていくことにしました。専任の担当者はいないため、書く量を決めすぎず、忙しい月でも止めないことを優先しています。記事と並行して、社長自身の経歴と考え方をSNSでも発信し始めました。どちらも、最初に言葉にした強みと相手から外れないことを決まりにしています。発信の題材がぶれると、読んだ人に何の会社なのかが伝わらなくなるからです。

現場で聞かれた疑問を、そのまま記事の題材にしました

記事の題材は、机に向かって考えるより先に、すでに手元にありました。見積もり担当が電話やメールで受けた質問、打ち合わせで設計者から聞かれたこと、そして社長が設計者だった頃に自分で調べて苦労したことです。事務所の机に小さなノートを置き、聞かれた疑問をその日のうちに書き留めるようにしたところ、ひと月もしないうちにノートの数ページが題材で埋まりました。

集まった題材は、相談につながりやすいものから順に書いています。試作の費用や納期のように、相談先を決める直前の人が気にする疑問を優先し、材料の一般的な性質のように、ほかのサイトでも詳しく説明されている話は後回しにしました。この町工場で実際にあった経験を添えられる題材かどうかも、選ぶときの基準です。記事の組み立ては、次の順番にそろえました。

  1. STEP 1

    疑問への答え

    記事の最初に、聞かれた疑問への答えを書く

  2. STEP 2

    答えの理由

    なぜその答えになるのかを説明する

  3. STEP 3

    この町工場での実例

    実際にあった相談や試作の話を添える

書き方にも工夫があります。社長は文章を書くのが得意ではなかったため、社長が疑問への答えを話し、それを事務の担当者が録音から文字に起こして整える、という分担にしました。記事に使う現場の写真は工場長が撮ります。話し言葉から起こした記事には、設計者だった社長の実感がそのまま残り、教科書のような説明とは違う読み物になりました。たとえば、内側の角を直角に尖らせた図面がなぜ削りにくいのかを説明する記事では、社長自身が設計者だった頃に同じような図面を描いて差し戻された話から書き始めています。

町工場の事務所で、作業着姿の社長が話す内容を机の上のスマートフォンで録音し、事務の担当者がノートパソコンで記事の下書きに文字を起こしている様子と、「話す」「録音」「文字に起こす」の流れを示す矢印

記事の最後には、同じ悩みがあれば図面が固まる前でも相談できることと、試作の相談の流れをまとめたページへの案内を置きました。ただし、本文を宣伝で埋めることはしていません。読んだ設計者が自分で答えにたどり着けることを優先し、それでも迷ったときに相談できる相手として思い出してもらう、という考え方です。

公開した記事の中には、ほとんど読まれないものもありました。その場合も消さずに、Search Consoleで表示されている言葉を見ながら、題名や説明の足りないところを書き足していきます。読まれ方を見て手を入れる作業も、記事を書くことと同じくらい大切にしました。

社長自身の経歴と考え方を、SNSでも発信しました

記事と並んで力を入れたのが、社長自身の発信です。この町工場の強みは、設計の事情が分かる社長がいることでした。ところが、見直す前のホームページには、社長の名前が会社概要に一行載っているだけで、どんな経歴の人が、どんな考えで仕事を受けているのかは分かりませんでした。

まず、ホームページに社長の紹介ページを作りました。社長自身の言葉で書いたのは、次のような内容です。

  • 機械メーカーで設計をしていた頃のこと
  • 家業を継ぐと決めた理由
  • 図面を受け取る側になって気づいたこと
  • これからどんな仕事を受けたいと考えているか

読み物の記事には、話し手として社長の名前を入れ、この紹介ページへつなげました。Googleの有用で信頼性の高いコンテンツの作成についてのドキュメントでは、コンテンツを誰が、どのように、なぜ作ったのかという観点で見直すよう勧めています。誰が作成したのかが明確であれば、エクスペリエンス(経験)、専門性、権威性、信頼性を表すE-E-A-Tが直感的に理解されやすくなるとし、著者の情報が求められるようなコンテンツでは、バイライン(署名)を記載するなどして正確な著者の情報を加えることを強く勧めています。同じドキュメントでは、E-E-A-Tそのものはランキングに直接影響する要因ではないとも説明されています。紹介ページは順位を上げるための仕掛けではなく、誰が図面を見てくれるのかを知りたい設計者に、判断材料を渡すためのものです

同じく Google 検索セントラルのドキュメントで、コンテンツが有用かどうかを作り手自身が評価するための質問がまとめられています。「誰が」のほかに「どのように」「なぜ」作ったかの項目があり、なぜ作ったかは、おそらくコンテンツに関して答えるべき最も重要な質問だと書かれています。

SNSでは、社長が加工の途中の部品や、図面のどこを変えれば削りやすくなるかといった短い気づきを投稿しています。設計者時代の失敗談や、安さと速さだけで勝負しないと決めた理由のように、考え方が伝わる投稿も交えました。投稿の中で説明しきれない話は、ホームページの記事につなげています。検索では、疑問を持った人が自分から答えを探しに来ますが、SNSでは、まだ相談先を探していない設計者の目にも社長の考えが届きます。発信の場所を分けたことで、記事を読んだ人が社長の投稿を見に行き、投稿を見た人が名前で検索してホームページに来る、という行き来が生まれました。

記事と社長の投稿を読者に行き来してもらうには、記事の中で話し手とその SNS がすぐに分かることが前提になります。ホームページを WordPress で運営しているなら、Kashiwazaki SEO Author Panel Manager で社長を人物(Person)として登録し、記事ごとにブロックで著者パネルを差し込めます。人物の情報は WordPress のユーザーとは別に管理するので、投稿作業は事務の担当者が受け持ち、社長は話すだけという分担のままでも、記事に社長の名前を出せます。記事ごとに「執筆者」「監修者」などの表示ラベルを設定でき、登録した SNS の URL からアイコンを自動で判定して表示し、Schema.org の構造化データ(JSON-LD)も出力します。どの記事でその人物を使っているかも管理画面で確かめられるため、社長が話し手になった記事を後から見直すときにも役立ちます。

SNSを使った発信は、事業者向けの取引が中心の小さな会社では、まだ広く行われているとはいえません。中小企業庁の2026年版小規模企業白書によると、SNSを広告やマーケティングに活用しているかを尋ねた調査で、売上高のうち事業者向けのほうが多いBtoBの小規模事業者は、活用しておらず関心もないという回答が48.4%で最も多く、一般消費者向けのBtoCの事業者より活用している割合が低くなっています。

出典: 中小企業庁「2026年版 小規模企業白書」第2-1-71図(資料: デロイト トーマツ「令和7年度小規模事業者の経営課題と事業活動に関する調査」)

この町工場も、始める前は、事業者向けの仕事にSNSは縁が薄いと考えていました。実際に始めてみて気をつけたのは、社長を大きく見せないことです。実績を並べるより、うまくいかなかった試作の話や、断った仕事の理由を正直に書いた投稿のほうが、読んだ人からの反応が多く集まりました

発信を続けるための決め事も、いくつか作りました。

  • 取引先の部品や図面が写り込んだ写真は投稿しない
  • 投稿する前に工場長にも目を通してもらう
  • 忙しい週は無理に投稿せず、書きためた話を後から出してよい

社長一人の気力に頼ると、仕事が立て込んだ時期に止まってしまうため、続けられる形を先に決めておきました。

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社長の発信で私たちSEO Note! Teamが大切だと考えているのは、SNSのプロフィール、ホームページの紹介ページ、記事に載せる話し手の名前の三か所で、経歴や肩書きの書き方をそろえることです。場所ごとに書き方が違うと、名前で検索して行き来した人が、同じ人物だと確信しにくくなります。投稿の中身を工夫する前に、まずこの三か所を並べて見比べてみてください。

半年ほどで検索からの流入と問い合わせの数が増えました

ここで示す数字は、複数の取り組みを再構成したモデルケースにおける一例です。特定の会社の実測値ではなく、同じような順番で進めたときの変化の出方として読んでください。業種や扱う商材、もとのサイトの状態によって、結果は大きく変わります。

数字を見る場は、社長と工場長、見積もり担当の三人で、月に一度設けました。見る数字は次のとおりです。

  • Search Consoleの表示回数(検索結果に表示された回数)とクリック数
  • 記事ごとの訪問の数
  • 問い合わせの件数と中身

問い合わせフォームには、この町工場を何で知ったかを選ぶ欄を足し、記事、SNS、紹介のどこから来た相談なのかを分けて数えられるようにしました。

最初に動いたのは、Search Consoleで見る表示回数、つまり検索結果に表示された回数でした。タイトルと説明文を直してからひと月ほどで、試作や小ロットを含む言葉で検索結果に表示される回数が少しずつ増え始めます。ただ、この時期はまだ表示される位置が低く、クリックはほとんどありません。数字だけを見ていたら、手応えのない時期に感じられたはずです。

表示回数は増えているのにクリックが伴わない言葉については、検索結果に出ているタイトルと説明文をあらためて見直しました。表示されている言葉とページの中身が合っていれば、説明文に相談できる内容を具体的に書き足し、合っていなければ、その言葉に答える記事を別に用意する、という分け方です。月に一度の場で表示回数とクリック数を並べて見ていたからこそ、手を入れる順番を決められました。

三か月目に入った頃から、読み物の記事が検索から読まれるようになりました。よく読まれたのは、削りにくい形の理由や、試作の費用が決まる仕組みを説明した記事です。一つひとつの記事が集める訪問は多くありませんが、記事の数が増えるにつれて合計が積み上がり、記事から試作の相談の流れのページへ進む人も出てきました。記事を読んだ人が相談の流れのページを経て問い合わせてくる、最初の相談が届いたのもこの頃です。

半年がたつ頃には、検索からホームページへの訪問は、取り組む前のおよそ三倍になりました。問い合わせフォームからの仕事の相談は、月に一件あるかどうかという状態から、毎月数件が途切れずに届くようになっています。社名や社長の名前で検索される回数も増えました。SNSで社長の投稿を見た人が、名前で調べてホームページに来るようになったことが、その一因と考えられます。ここまでの変化を時期ごとに並べると、次のようになります。

時期(一例)見えた変化(一例)
タイトルと説明文を直してからひと月ほど試作や小ロットを含む言葉で、検索結果に表示される回数が少しずつ増え始める。クリックはほとんど無い
三か月目に入った頃から読み物の記事が検索から読まれるようになり、記事を読んだ人からの最初の相談が届く
半年がたつ頃検索からホームページへの訪問が取り組む前のおよそ三倍になり、仕事の相談が毎月数件届くようになる

何で知ったかの欄を見ると、半年の時点では、記事を読んで相談してきた人と、社長の投稿を見て相談してきた人の両方が、それぞれまとまった数になっていました。記事だけ、SNSだけに絞っていたら、どちらかの入り口を取りこぼしていたことになります。

一方で、思うように動かなかった数字もあります。金属加工のような広い言葉では、半年たっても検索結果の上位にはほとんど出てきませんでした。こうした言葉の検索結果には、規模の大きい加工会社や、多くの工場をまとめて紹介するサイトが並んでいました。この町工場は、広い言葉での順位を追うのをやめ、試作や小ロットの疑問に答える言葉に絞り続けることにしました。問い合わせにつながっていたのは、もともと検索する人の少ない、具体的な言葉のほうだったからです。

半年のあいだに公開した記事の数は、決して多くありません。それでも問い合わせが増えたのは、一本ごとの題材を、実際に聞かれた疑問と、この町工場の強みが重なるところから選んでいたためだと考えられます。記事の数を追うより、題材の選び方を崩さなかったことが、限られた人手で成果につながった理由です

振り返ると、半年という期間は、強みの言語化とサイトの土台の見直しに一か月あまり、記事と発信を積み重ねて検索に拾われ始めるまでに数か月、という流れの合計でした。途中で数字が動かない時期があっても、表示回数、記事への訪問、問い合わせという順番で変化が出ることを、取り組む前に社内で共有していたことが、手を止めずに続けられた理由の一つです。

数字より先に、問い合わせてくる相手の質が変わったことに気づきました

実は、社長が変化に気づいたのは、件数がはっきり増えるより前でした。問い合わせがまだ月に一件か二件だった頃から、届く相談の書き出しが変わり始めていたのです。

以前にたまに届いていた相談は、図面が添付されていて、数量と希望の単価だけが書かれた、相見積もりのためのものがほとんどでした。複数の工場に同じ図面を送り、一番安いところに頼むという進め方です。この町工場は価格で勝てないことが多く、見積もりを出しても返事が来ないまま終わるのが常でした。

見直した後に届き始めた相談は、図面がまだ無いものや、手書きのスケッチだけのものが目立ちました。記事を読んで削りにくい理由が分かったので、形を決める前に相談したい、という書き出しで、困っていることを先に書いてくる設計者が増えたのです。社長の投稿を読んで、この人に図面を見てほしいと名指しで連絡してくる相談もありました。これまで取引のなかった遠方の会社から相談が届くようになったのも、この時期です。以前の相談と比べると、違いは次のとおりです。

比べる点以前にたまに届いていた相談見直した後に届き始めた相談(一例)
添えられていたもの図面手書きのスケッチだけのもの、または図面がまだ無いもの
書かれていたこと数量と希望の単価困っていることや、記事や投稿を読んだこと
相手の進め方複数の工場に同じ図面を送り、一番安いところに頼む形を決める前に相談する。社長を名指しで連絡してくることもある

相談の中身が変わると、打ち合わせの進み方も変わります。相手はすでに記事や投稿でこの町工場の考え方を知っているため、初回の打ち合わせで会社の説明に時間を使わずに済み、すぐに図面の話に入れます。試作の段階から関わった部品は、その後の追加の試作や小ロットの製作にもつながりやすく、価格だけで比べられる場面が少なくなりました。見積もりを出した相談のうち発注まで進むものの割合も、見直す前より高くなっています。相談の段階で、この町工場が何を得意とし、何を受けないのかが相手に伝わっているため、見積もりを出してから話が合わないと分かる場面が減ったのです

工場が見える打ち合わせ机で、作業着姿の社長と手帳を持った開発の設計者が手書きのスケッチを囲み、社長が赤ペンで丸みを書き込んだ角を指さしている様子と、「形を決める前に相談」というラベル

相談が増えると、受けられない相談に返事をする場面も増えます。この町工場では、ページに書いた受けない仕事に当たる相談にも、断る理由と、その仕事に向いていそうな工場の探し方を添えて返しました。一度断った相手から、後日あらためて試作の相談が届いたこともあります。

社内の受け止め方も変わりました。以前は開かずに消していたフォームの通知を、見積もり担当がその日のうちに確かめ、社長と共有するようになっています。相談の書き出しを読めば、記事が役に立ったのか、投稿が届いたのかが分かるため、次に書く題材の手がかりにもなりました。

思いがけない変化もありました。社長の発信や記事を読んだという人から、採用の応募が届いたのです。ものづくりの考え方に共感したうえで応募してくる人は、入社する前から仕事の中身をよく知っています。問い合わせを増やすために始めた発信が、人を迎える入り口にもなりました。

私たちSEO Note! Teamがこの町工場の取り組みを振り返って、効いたと感じるのは、検索向けの工夫そのものよりも、社長の経歴という、ほかの会社がまねできない材料を、設計者の疑問への答えという形に置き換えたことです。タイトルや説明文の書き直しは、どの会社でも同じように取り組めます。けれども、読んだ人が相談しようと決めるのは、誰がどんな考えで仕事を受けているのかが見えたときでした。件数が少ないうちから、相談の書き出しや相手の顔ぶれに目を向けていたことも、途中で手を止めずに済んだ理由だと考えています。

同じ進め方を考える会社に伝えたいのは、社長の発信を、社長一人の頑張りに任せきりにしないことです。社長の発信のところで触れた役割の分担や決め事は、忙しい時期にも発信を止めないための備えでした。発信が途切れると、記事を読んで社長の投稿を見に来た人に、いまは動いていない会社だと受け取られかねません。

まとめ

広告費や専任の担当者をかけられない中小企業のSEO対策では、何から手を付けるかで、その後の進み方が変わります。この町工場が最初にしたのは、ホームページの見た目を変えることではなく、自社の強みと届けたい相手を一文にまとめることでした

その一文をもとに、ページごとのタイトルと説明文を書き直し、機械の一覧を、何が作れるのかが分かる中身に変えました。そのうえで、現場で聞かれた疑問に答える記事を止めずに積み重ね、社長自身の経歴と考え方をホームページとSNSの両方で伝えています。半年ほどで検索からの問い合わせは増えましたが、それより先に表れたのは、考え方を知ったうえで相談してくる相手の変化でした。記事も社長の発信も、一度にたくさん作るより、役割を分けて止めずに続けたことが効いています。

自社のホームページに問い合わせが来ないと感じているなら、まずは社内で、これまで感謝された仕事と断った仕事を書き出し、付き合いの長い取引先に頼み続けてくれている理由を聞くところから始めてみてください。この町工場では、そこから見えた社長の経歴と考え方が、ほかの工場と比べられたときの一番の違いになりました。

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