事務所のホームページはすでにある。所在地と業務内容、所長税理士のあいさつが並び、問い合わせフォームも置かれている。それでも届く相談は、確定申告の時期だけの単発の依頼や料金だけを尋ねる連絡が中心で、事務所が本当に増やしたい法人の顧問契約にはなかなかつながらない。WEBマーケティングを任された担当者の方が抱えやすいのは、こうした悩みです。
税理士事務所のSEOには、他の業種にはない条件が重なります。顧問先の事例は守秘義務があるためそのまま紹介できず、広告の表現には税理士会の定めがあり、記事の内容を確かめる所長税理士は確定申告の時期に手が離せません。一般の業種の事例をそのまま当てはめても、進め方の途中で行き詰まりやすいのはこのためです。
税理士事務所がSEO対策に取り組むと決めた経緯と当時のホームページの状況
この事例で取り上げるのは、地方都市のターミナル駅から歩ける場所に事務所を構える個人の税理士事務所です。所長税理士ともう一名の税理士、記帳や申告書の作成を担う職員が数名という体制で、顧問先は地元の中小企業と個人事業主が中心です。開業から十数年、既存の顧問先からの紹介と、取引のある金融機関や他の士業からの紹介によって顧問先を増やしてきました。
SEO対策を考え始めたきっかけは、紹介による新規の依頼が以前ほど伸びなくなったことでした。国税庁の税理士制度のページに掲載されている日本税理士会連合会の集計では、税理士の登録者数は令和6年度末で81,696人と年々増えており、事業者から見た依頼先の選択肢は増え続けています。
顧問先の経営者の世代交代が進むなかで、事務所との付き合いがない後継者の世代は、税理士を探すときにまず検索するのではないかと所長は感じていました。紹介に頼る集客がいずれ細るという危機感はあったものの、ホームページで何をすればよいのかが分からず、記帳業務を担当する職員の一人にWEBの担当を兼務で任せていた状態です。更新は、お知らせ欄に年末年始の休業案内を載せる程度にとどまっていました。
ホームページは開業時に制作会社へ依頼して作ったもので、トップページ、事務所案内、業務内容、料金、アクセス、問い合わせという構成です。業務内容のページには、法人の税務、個人の確定申告、相続税の申告、会社設立の支援、記帳代行が一つのページに名称だけで並び、それぞれの業務で何をしてもらえるのか、どのような事業者を得意としているのかは書かれていませんでした。料金のページは顧問料を問い合わせるよう促す一文だけで、所長の経歴は事務所案内の末尾に数行ある程度です。事務所名で検索すれば一番上に表示される一方、地域名と税理士を組み合わせた検索では、2ページ目より後ろに沈んでいました。
アクセス解析は制作時に設定されたまま、誰も見ていませんでした。問い合わせは紙の受付簿に日付と名前が書かれているだけで、どのページを見て連絡してきたのか、その後に顧問契約に至ったのかは記録されていません。支援を始める時点で、ホームページが事務所の売上にどれだけ貢献しているのかを示す材料は、事務所の中のどこにもありませんでした。
一方で、事務所には検索する人に伝えるべき強みがありました。所長は開業前から創業期の法人の決算や資金繰りの相談に多く携わっており、取引のある金融機関から創業したばかりの事業者を紹介されることが続いていました。もう一名の税理士は、相続税の申告と事業承継の相談を主に担当しています。こうした経験は顧問先や紹介元には知られていても、ホームページのどこにも書かれていませんでした。
ホームページはあるのに新規の顧問契約になかなかつながらなかった課題
支援の最初に、担当者と一緒に過去1年分の受付簿を読み返し、相談の内容ごとに分類しました。電話とフォームを合わせた問い合わせのうち、ホームページを見て連絡してきたと分かるものを拾い出すと、最も多かったのは確定申告の時期に集中する個人の申告の依頼で、次が顧問料の金額だけを尋ねる連絡でした。事務所が増やしたいと考えていた法人の顧問契約や、創業時からの継続的な支援につながった相談は、年間を通してごくわずかです。


問い合わせが顧問契約につながらない理由は、分類した記録とホームページの中身を突き合わせると、次の三つに整理できました。
- 強みが読み取れない業務内容
業務内容が名称の羅列で、この事務所が法人の継続的な支援を得意としていることが読み取れない。検索から来た人にとっては数ある税理士事務所の一つでしかなく、比べる軸が料金と距離しか残らない - 示されていない料金の考え方
顧問料がどの程度になるのか見当がつかないため、まず電話で金額だけを聞き、他の事務所と比べて終わるという行動を招いていた - 分からない税理士の経歴と担当してきた顧問先
二人の税理士がどのような経歴を持ち、どのような業種の顧問先を担当してきたのかが、ホームページから読み取れない
顧問契約は何年も続く関係になるため、依頼する側は料金と同じくらい、担当する税理士との相性や対応してもらえる範囲を気にします。その判断材料が、ホームページにはありませんでした。
確定申告の依頼が集中することにも、事務所としての悩みがありました。所得税の確定申告の期間は原則として翌年の2月16日から3月15日までで、この時期は既存の顧問先の申告だけで手一杯になります。ホームページに受付の条件や締め切りが書かれていないため、期限の直前に資料が揃っていない状態での依頼が届き、断る対応に職員の時間が取られていました。単発の申告の依頼そのものが悪いわけではありません。受けられない時期に、受けられない形の依頼を集めてしまっていたことが問題でした。
検索の側から見ても状況は同じです。Search Consoleを設定して数週間分のデータを確認すると、表示されている検索語のほとんどは事務所名によるもので、地域名と業務を組み合わせた検索ではほとんど表示されていませんでした。地域で税理士を探している人はいるのに、事務所がその人たちの目に触れる場所がなく、たまに見つけてもらえても顧問契約を検討するための情報が足りない。課題は集客の量より先に、事務所の強みと依頼の条件を、検索する人に伝える情報が欠けていることにあると整理しました。
数あるSEO会社の中から依頼先を決めるときに事務所が重視した点
この事務所は、SEO対策の依頼先を決めるまでに、制作会社やSEO会社など複数の提案を比べています。ここでは、私たちSEO Note! Teamが提案の場で税理士事務所から確かめられることの多い点を、事務所が依頼先を選んだときの判断材料として整理します。
最初に問われるのは、税理士という資格に固有のルールを前提にした提案になっているかどうかです。税理士法第38条は、税理士が正当な理由なく税理士業務に関して知り得た秘密を漏らすことを禁じており、税理士でなくなった後も同様とされています。一般の業種では当たり前の「お客様の事例」も、税理士事務所のホームページでは、顧問先の許諾なく同じ形で載せることはできません。広告についても、日本税理士会連合会が示す税理士会の綱紀規則の準則では、会員は所属する税理士会の定めに反する場合を除いて自己の業務を広告できるとしたうえで、必要な事項を細則で定めるとしています。日本税理士会連合会の資料では、その細則で禁止される広告や表示できない広告事項が定められていると説明されています。提案書に顧問先の成功事例を毎月掲載するといった施策が、許諾の取り方に触れないまま並んでいれば、その依頼先はこうした前提を持っていない可能性が高いと考えられます。
二つめは成果の指標です。問い合わせの件数だけを約束する提案は、確定申告の時期の単発の依頼で数字が簡単に膨らむため、事務所が求める顧問契約の増加とずれていきます。この事務所が重視したのは、問い合わせを業務ごとに分け、面談を経て顧問契約に至ったかどうかまで追う計測の設計が、提案に含まれているかどうかでした。
三つめは所長税理士の時間の使い方です。専門性が伝わる記事を作るには税理士の知見が欠かせませんが、確定申告の時期に原稿の確認を求める進め方では、事務所の本業に支障が出ます。繁忙期を避けた取材の日程と、所長が内容の確認に集中できる役割分担が提案に書かれているかは、契約した後に施策が止まらないかを見極める材料になりました。
最後は、個別の税務の相談にどう対応するかという線引きです。税理士法第52条は、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことを禁じており、国税庁の税理士法基本通達では、税理士業務を業とするかどうかは必ずしも有償であることを要しないとされています。記事の制作を担う外部の会社が、読者から寄せられた個別の申告や税額の計算についての相談に反復して応じれば、この制限に触れるおそれがあります。私たちが税理士事務所を支援するときは、税の判断を含む内容はすべて税理士が確認し、個別の相談には税理士が対応するという分担を、最初の段階で取り決めています。
現状分析とキーワード選定で組み立てた、地域と業務を掛け合わせた対策方針
方針づくりは、事務所がどの相談を増やしたいのかを決めるところから始めました。所長と担当者に、今後の柱にしたい業務と、体制の面でこれ以上は受けにくい業務を挙げてもらうと、柱にしたいのは創業期から成長期にある法人の顧問契約と、事業承継に関わる相続税の申告でした。相続税の申告は、対象となる人が広がっている業務でもあります。国税庁の申告事績によると、亡くなった人のうち相続税の課税対象となった人の割合を示す課税割合は令和6年分で10.4%となり、基礎控除額の引下げがあった平成27年分以降、おおむね上昇が続いています。
柱にする業務とは反対に、記帳だけを請け負う依頼や確定申告の直前に持ち込まれる単発の申告は、受けるとしても条件を明確にしたうえで、と整理しています。この線引きが、キーワード選定の前提になりました。
キーワードは、地域名と業務を掛け合わせる形で候補を洗い出し、そこに検索する人の状況を表す言葉を重ねました。それぞれの軸で候補にした言葉と、受け皿にしたページは次のとおりです。
| 軸 | 候補にした言葉 | 受け皿にしたページ |
|---|---|---|
| 地域 | 事務所のある市の名前、最寄りのターミナル駅の名前、顧問先が多い周辺の市町 | 業務ページと、事務所から対応できる範囲を案内する地域ページ |
| 業務 | 会社設立、法人の顧問、相続税の申告、個人の確定申告 | 業務ごとのページ |
| 状況 | 個人事業からの法人成り、今の税理士からの切り替え、相続税の申告が必要かどうか | 税務コラム(関連する業務ページへつなぐ) |
とくに税理士の変更や切り替えを含む検索は、すでに顧問税理士がいる事業者が次の依頼先を探している状態を示しており、検索の回数は少なくても顧問契約に近い検索として優先度を上げました。
地域の範囲は、業務によって変えています。この事務所は法人の顧問先とオンラインでの打ち合わせにも対応しており、事務所から離れた地域の事業者とも契約できる体制でした。一方、相続税の申告ではご家族が書類を持って事務所に足を運ぶ場面が多いため、通える範囲の地域名との組み合わせに絞っています。相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。期限を気にしながら依頼先を探す人に、通える距離の事務所として見つけてもらうことを優先しました。
候補を並べた後は、検索する人が何を知りたいかによって受け皿となるページを決めました。業務ごとのページには、対象となる事業者や個人、依頼した後の進め方、料金の考え方、担当する税理士を載せ、状況を表す言葉には税務コラムで応えて、コラムから業務ページへ進める設計です。料金の考え方については、税理士会の綱紀規則の準則で、会員は自らの報酬算定基準をあらかじめ定め、報酬に関する委嘱者の質問に答える用意がなくてはならないとされています。金額が何によって変わるのかを業務ページで説明することはこの考え方とも合い、料金だけを尋ねる問い合わせを減らす効果も見込めました。
地域ごとのページを作るときには、税理士ならではの注意点もあります。税理士法第40条は、税理士が税理士事務所を二以上設けることを禁じています。日本税理士会連合会の資料では、税理士事務所かどうかを判断する外部に対する表示として、看板などのほかにホームページやSNSへの連絡先の掲載が挙げられています。周辺の市町ごとのページに、そこに拠点があるかのような所在地や連絡先を載せることは避けるべきです。この事務所では、地域ページはあくまで事務所から対応できる範囲を案内するページとし、所在地と連絡先は一つの事務所に統一しました。
対策方針にもとづいて実際に進めた施策
方針が固まった後、施策は夏から秋にかけて集中して進めました。確定申告の期間が終わり、所長と職員の手が比較的空く時期に、取材と原稿の確認を前倒しで済ませておくためです。ここからは、内部対策の見直し、税務コラムの制作体制、Googleビジネスプロフィールの整備の三つに分けて説明します。三つの施策は別々に見えますが、どれも課題の整理で見えた、事務所の強みと依頼の条件を検索する人に伝えるという一つの目的に向けたものです。作業は、技術的な対応と原稿の構成を私たちSEO Note! Teamが、公開してよいかどうかの判断を所長が受け持つ形で分けています。
タイトルとディスクリプション、内部リンクを中心にした基本的な内部対策の見直し
最初に手を付けたのは、ページのタイトルとディスクリプションです。支援前はどのページも業務の名称に事務所名を付けただけのタイトルで、業務内容はすべて一つのページにまとまっていたため、どの検索にも的確に応えられていませんでした。業務ごとにページを分けたうえで、タイトルには地域名と業務、そして誰のためのページかを入れています。会社設立のページであれば、市の名前と会社設立の税務支援、創業期の法人に向けたページであることが一目で分かる形です。ディスクリプションには、対象となる事業者、依頼後の流れ、料金の考え方を載せていることを短く書き、検索結果の段階で自分に合う事務所かどうかを判断できるようにしました。書き換えの前後は、次のとおりです。
<!-- 支援前: 業務の名称に事務所名を付けただけのタイトル -->
<title>業務内容 | ○○税理士事務所</title>
<!-- 支援後: 地域名と業務、誰のためのページかが分かるタイトルとディスクリプション -->
<title>○○市で会社設立を考える方と創業期の法人の税務支援 | ○○税理士事務所</title>
<meta name="description" content="○○市で会社設立を考える方と創業期の法人に向けて、対象となる事業者、ご依頼後の流れ、料金の考え方をご案内します。">
タイトルの言葉選びで意識したのは、広告として問題になり得る言い回しを避けることです。必ず税金が安くなると結果を約束したり、根拠を示せない比較や最上級の表現を使ったりすることは、利用者の判断を誤らせる広告につながるおそれがあります。税理士法第36条は、不正に税を免れることなどについて指示をしたり相談に応じたりすることを禁じており、節税をうたう言葉が行き過ぎれば、事務所の信用そのものを損ないます。クリックを集めるための強い言葉ではなく、対象と内容の具体性で選ばれるタイトルにすることを、最初に所長と合意しました。
内部リンクは、検索から入った人が顧問契約の相談にたどり着くまでの道筋として設計し直しました。税務コラムから関連する業務ページへ、業務ページから担当する税理士の紹介と料金の考え方へ、そこから相談の予約へと進めるようにし、業務ページ同士も、会社設立から法人の顧問へ、事業承継から相続税の申告へというように、事業者の段階に沿ってつないでいます。


あわせて問い合わせフォームに、相談したい業務と事業の形態を選ぶ項目を加えました。項目を加えただけで、どのページからどの業務の相談が届いたのかを後から追えるようになり、効果測定の土台になっています。
専門性が伝わる税務コラムの制作体制づくり
税務コラムで最も難しいのは、事務所の専門性を伝えたいのに、その裏付けとなる顧問先の具体的な話を書けないことです。守秘義務は税理士本人だけでなく、税理士法第54条によって税理士事務所の使用人その他の従業者にも課されており、原稿に関わる職員も同じ意識を持つ必要があります。そこでコラムでは、特定の顧問先を思わせる業種や地域、時期、金額の組み合わせを避け、複数の相談に共通する論点を一般化した設例として書くことを原則にしました。外部の制作者である私たちは顧問先の情報を受け取らない形で取材を組み立て、設例であっても読んだ顧問先が自分のことだと感じる内容になっていないかを、公開前に所長が確認します。
コラムの制作は、次の順で進めています。
- テーマの選定
キーワード選定で優先度を上げた状況の言葉と、所長が面談で繰り返し受けている質問を突き合わせて決める - 取材
私たちが事前に構成案と質問を用意し、税の判断に関わる部分を所長の言葉で補ってもらう - 執筆
構成案と取材の内容をもとに、原稿は私たちが書く - 税理士による確認
条文や通達、国税庁の案内に照らした内容の確認と、事務所として公開してよいかどうかの判断を所長が行う - 公開
確認した税理士の氏名と、経歴を紹介するページへの導線を載せて公開する
確認した税理士の氏名を載せるのは、そのコラムが誰の知見にもとづくのかを読者に示すためです。Googleは有用なコンテンツの考え方として、誰がコンテンツを作成したのかを明確にし、著者の背景や専門分野の情報につながるバイラインを記載することを挙げています。


コラムと相談の境目も決めておきました。コラムを読んだ人から、自分の場合の税額や申告の方法を尋ねる問い合わせが届くことがあります。先に触れた税理士業務の制限があるため、こうした質問に外部の制作者である私たちが答えることはせず、税理士が面談の中で対応する流れに統一しています。読者の状況によって判断が変わる論点を扱うコラムは、個別の事情は税理士に相談してほしいという案内で締めくくりました。
税務のコラムには、他の業種にはない更新の負担もあります。税の制度は改正が続くため、公開した時点では正しかった内容が、翌年には古くなることがあります。そこで各コラムには内容の基準となる時点を明記し、確定申告に関するコラムは期間が始まる前の冬の初めまでに、年末調整に関するコラムは秋のうちに公開する予定を組みました。どちらの原稿も所長の確認は繁忙期の前に終えておき、確認待ちで公開が止まらないようにしています。
確定申告や年末調整のコラムをいつまでに公開し、いつ読み直すかは、感覚ではなく検索数の動きで決めたいところです。検索ボリューム調査ツールは、キーワードごとに直近12か月の月間検索数の推移をグラフと表で確認できるので、時期ごとに検索が集まる言葉を並べて、検索が増え始める月から逆算した公開と見直しの予定を組めます。所長の確認を前倒しする時期も、その推移を根拠に説明しやすくなります。
Googleビジネスプロフィールを軸にしたMEO対策の強化
地域名と税理士を組み合わせて検索すると、通常の検索結果と並んで地図の枠に事務所の情報が表示されます。この事務所もGoogleビジネスプロフィールを登録してはいたものの、開業当初に作ったまま写真も営業時間も古い状態でした。整備にあたっては、税理士事務所ならではの注意点を踏まえています。
最初に見直したのはビジネス名です。Googleの「Google に掲載するビジネス情報のガイドライン」では、ビジネス名には店舗やウェブサイト、ビジネスレターなどで一貫して使用している実際の名称を使うこととされ、キャッチフレーズやサービスの情報、所在地の情報といった不要な情報を含めた場合はプロフィールが停止されることがあると説明されています。地図で目立たせようと事務所名に相続税の申告を得意とする旨や駅名を付け足すと、このガイドラインに反します。税理士名簿には税理士法第18条により事務所の名称と所在地が登録されるため、この事務所では登録している名称と所在地を正本とし、ホームページ、ビジネスプロフィール、名刺や封筒の表記をすべて揃えました。


次に、所属する税理士ごとにプロフィールを作るかどうかを検討しました。ガイドラインでは、医師や弁護士のように対外的に専門業務を行う個人専門家は専用のプロフィールを作成できる一方、サポートスタッフが自分のプロフィールを持つことはできないとされています。この事務所では、相談の窓口を事務所に一本化したいという所長の方針から個人のプロフィールは作らず、事務所のプロフィールに情報を集約しました。
営業時間は、繁忙期の実態に合わせて更新する運用にしています。ガイドラインでは、通常の営業時間として季節別の営業時間を入力できるほか、祝祭日などの特定の日には特別営業時間を指定できるとされています。確定申告の期間に受付時間を延ばす日や年末年始の休業日をあらかじめ登録しておけば、地図から電話をかけた人がつながらないという行き違いを減らせます。投稿の機能では、単発の確定申告の依頼を受け付ける締め切りや相続の相談会の案内など時期ごとの情報を発信し、詳しい条件は業務ページで確認できるようにしました。
口コミへの返信には、守秘義務の観点から特に慎重な基準を設けました。投稿した人が顧問先であることや、どのような依頼だったのかを返信の中で認めてしまえば、それ自体が税理士業務に関して知り得た秘密を明かすことになりかねません。この事務所で決めた返信の基準は次のとおりです。
- 返信では投稿へのお礼と事務所としての姿勢だけを伝える
- 依頼の有無や内容には触れない
- 低い評価が付いた場合も、事実関係を返信の中で説明せず、事務所へ直接連絡してもらうよう案内する
- 判断に迷う口コミは、返信を急がずに所長の確認を待つ
何を書くかより先に何を書かないかを決めておいたことで、担当者が一件ごとに迷わず返信できるようになりました。
施策を進める中で見えてきた検索順位と問い合わせ数の変化
ここで示す数値は、複数の支援経験をもとに再構成したモデルケースの一例であり、特定の税理士事務所の実績ではありません。ただし、変化が表れる順番とその背景は、私たちSEO Note! Teamが税理士事務所の支援で繰り返し見てきたものに沿っています。
最初に動いたのは、状況を表す言葉を含む検索でした。業務ページとコラムを公開してから数か月で、法人成りや税理士の切り替え、相続税の申告が必要かどうかといった言葉を含む検索にコラムが表示され始めます。一つひとつの検索の回数は少ないものの、コラムから業務ページへ進む人が出てきたことで、業務ページを読んだうえで相談を申し込む人が現れ始めました。
半年ほどが経つと、市の名前と税理士を組み合わせた検索で検索結果の1ページ目に入り、会社設立や相続税の申告と地域名を組み合わせた検索では上位に表示されるようになりました。ホームページ経由と分かる問い合わせは、支援前に月2件から3件ほどだったものが、半年後には月5件前後、1年後には月8件前後で推移しています。確定申告の時期は個人の申告の依頼が加わって数字が膨らむため、比較は前年の同じ月と、業務の分類ごとに行いました。
市の名前と税理士の組み合わせで1ページ目に入った後、同じ物差しで周辺の市町の順位を追うときに使えるのがSEO検索順位チェックツールです。地域の指定を事務所のある市や周辺の市町に切り替えて同じキーワードを測れるので、担当者の現在地に左右されずに地域ごとの順位を並べられます。コラムと業務ページのどちらが表示されるかが入れ替わる時期には、ドメイン部分だけで一致を確かめるあいまいモードを併用すると、事務所のサイトが順位を落としたのか、表示されるページが変わっただけなのかを切り分けやすくなります。
件数以上に大きかったのは、問い合わせの中身の変化です。支援前にはほとんど見られなかった法人の顧問契約や会社設立の相談が、1年後には問い合わせの半数近くを占めるようになりました。料金の考え方を業務ページで説明したことで金額だけを尋ねる電話は減り、面談は相談者が事務所の進め方と費用の目安をすでに理解している状態から始まります。税理士の切り替えを検討している事業者からの相談も定期的に届くようになり、面談から顧問契約に至る割合も支援前より高くなりました。
| 指標(モデルケースの一例) | 支援前 | 支援後 |
|---|---|---|
| 市の名前と税理士を組み合わせた検索の順位 | 2ページ目より後ろ | 半年ほどで1ページ目 |
| ホームページ経由と分かる問い合わせ | 月2件から3件ほど | 半年後に月5件前後、1年後に月8件前後 |
| 法人の顧問契約や会社設立の相談 | ほとんど見られない | 1年後に問い合わせの半数近く |
| 金額だけを尋ねる電話 | 確定申告の依頼に次いで多い | 減った |
| 面談から顧問契約に至る割合 | 支援前の水準 | 支援前より高くなった |
一方で、思うように動かなかった部分もあります。周辺の市町の名前と税理士を組み合わせた検索は、事務所のある市に比べて順位の上がり方が緩やかで、1年が経った時点でも1ページ目に届かない組み合わせが残りました。Googleはローカル検索の結果が主に関連性、距離、知名度に基づいて表示されると説明しており、所在地から離れた地域ほど地元の事務所が表示されやすく、ページを用意しただけでは差が埋まりにくくなります。この事務所では、離れた地域については地域ページの順位を追うことにこだわらず、オンラインで対応できる法人の顧問のページとコラムから相談につなげる方針に切り替えています。相続税の申告の相談も月ごとの件数の波が大きく、数か月単位でならして見る必要がありました。
単発の確定申告の依頼にも変化がありました。受付の条件と締め切りを業務ページと地図の投稿で案内したことで、期限の直前に資料が揃わないまま届く依頼が減り、断る対応に取られていた職員の時間が戻っています。受けられる依頼だけが届くようになったことは、繁忙期の事務所にとって、件数が増えたことと同じくらい意味のある変化でした。
支援を担当したスタッフが振り返る、成果につながったと感じるポイント
この支援を担当した私たちSEO Note! Teamのスタッフが、振り返って成果につながったと感じているポイントを挙げます。いずれも、税理士事務所の支援で私たちが大切にしてきた判断です。
最初に挙げたいのは、成果の指標を問い合わせの件数ではなく、顧問契約につながる相談の数に置いたことです。件数を指標にしていれば、確定申告の時期の単発の依頼を集めるページに力を入れる判断もあり得ました。そうせずに済んだのは、支援の初めに所長とどの相談を増やしたいのかを言葉にし、問い合わせフォームに業務の分類を加えて、毎月その内訳を確かめられる状態にしたからです。指標が事務所の経営の目標と一致していたため、所長が報告に割ける時間は短くても、施策の判断に迷う場面はほとんどありませんでした。
二つめは、守秘義務と広告のルールを、書けないことの一覧ではなく、コラムと業務ページの型として扱ったことです。顧問先の話を書けないことは、税理士事務所のコンテンツを作るうえで最初は大きな制約に見えます。しかし、複数の相談に共通する論点を設例にして書く型を決めてしまえば、所長が確認で迷う場面が減り、原稿の差し戻しも少なくなります。制約を型に変えたことが、公開のペースを落とさずに済んだ理由だと考えています。
三つめは、所長の時間を税務の予定に合わせて使ったことです。税理士事務所の支援では、春先に取材や確認をお願いすると、施策がそこで止まりがちです。夏から秋に取材と確認を集中させ、繁忙期には公開と計測だけを進めるという年間の予定を最初に共有しておいたことで、確定申告の時期にも施策が途切れませんでした。
四つめは、税理士の顔と言葉を前に出したことです。支援前は数行しかなかった二人の税理士の紹介を、それぞれが担当してきた業務や、面談で大切にしている説明の仕方まで書き込んだページに作り直し、業務ページとコラムの両方からつなぎました。顧問契約の面談では、相談者が事前にそのページを読み、担当する税理士の考え方を知ったうえで話を始める場面が増えています。何年も続く関係を選ぶ人にとって、誰が担当するのかは料金と並ぶ判断の材料です。それをホームページで先に伝えられたことが、面談からの契約に表れたと見ています。


最後に、料金の考え方を公開するかどうかを、所長と時間をかけて話し合ったことです。料金を載せると他の事務所と金額だけで比べられるのではないかという懸念は、税理士事務所の方からよく伺います。この事務所の所長も当初は慎重でしたが、金額が何によって変わるのかという算定の考え方を丁寧に説明する形にしたことで、価格だけで比べる人よりも、進め方に納得したうえで相談する人が増えました。検索から来る人に判断の材料を先に渡すことが、結果として事務所に合う相談者を集めることにつながったと感じています。
公開後も続けている効果測定と改善のサイクル
業務ページとコラムを公開した後も、効果測定と改善は、月ごと、季節ごと、年ごとの三つの周期で続けています。税理士事務所の問い合わせは税務の予定に左右されやすいため、一か月単位の増減だけを見ていると、施策の効果と季節による変動を取り違えるからです。
| 周期 | 主に見るもの | 手を入れる対象 |
|---|---|---|
| 月ごと | Search Consoleの検索語、Googleアナリティクスで計測しているフォームの送信と電話番号のタップ、事務所の問い合わせ記録 | 次に手を入れるページ、所長への報告 |
| 季節ごと | 確定申告の期間の依頼の件数、受付の条件の案内 | 業務ページの書き方、時期ごとのコラム、ビジネスプロフィールの営業時間 |
| 年ごと | 税制改正の内容、表示回数とクリックの差 | コラムと業務ページ全体、タイトルとディスクリプション |
月ごとの確認で要になるのは、事務所の問い合わせ記録です。検索語やアクセスの数字だけでは、どのページが顧問契約につながったのかは分からないためです。記録には、次の項目を一件ずつ残してもらっています。
- 相談された業務
- どのページを見て連絡してきたか
- 面談の有無
- 顧問契約に至ったかどうか
この記録と検索の数字を突き合わせて初めて、次に手を入れるべきページが見えてきます。報告書は、所長が繁忙期でも短時間で読めるよう、前年同月との比較と、顧問契約につながった相談の件数を先頭に置く形に固定しました。
季節ごとには、税務の予定に合わせた見直しを行います。確定申告の期間が終わった後は、単発の依頼の件数と受付の条件の案内が機能したかを振り返り、翌年の業務ページの書き方に反映します。秋には年末調整、冬の初めには確定申告に関するコラムを読み直し、情報が古くなっていないかを確かめてから、検索が増える時期を迎えます。ビジネスプロフィールの営業時間の変更や休業日の登録も、この見直しの中で漏れなく行います。


年ごとには、税制改正を受けてコラムと業務ページ全体を見直します。改正の内容が固まった段階で影響を受ける論点を含むコラムを一覧にし、内容の基準となる時点を更新しながら、所長の確認を経て書き直します。あわせて、表示回数は多いのにクリックされていないページのタイトルとディスクリプションを見直し、新しく応えるべき状況の言葉が生まれていないかを洗い出します。
税制改正を受けて見直したコラムと、誤字を直しただけのコラムで、同じように更新日だけが新しくなってしまうと、読者はどの記事が改正を反映済みなのかを見分けられません。WordPress で運用しているサイトであれば、Kashiwazaki SEO Lock Modified Date で投稿を編集しても更新日を固定しておき、必要なときだけ手動で更新日を変えられます。軽微な修正では更新日を動かさず、内容の基準となる時点を見直したときにだけ更新日を改めるという運用を、担当者の注意力に頼らず仕組みとして守れます。
このサイクルを続けていると、事務所の日々の業務との結び付きも強くなっていきます。面談で受けた質問が次のコラムのテーマになり、そのコラムを読んでから相談に来る人が増えることで、面談そのものが短くても中身の濃いものになる。所長の知見が一件の面談で終わらず、ホームページの上に少しずつ蓄えられていく状態を作ることが、この段階で私たちが目指していることです。
まとめ
税理士事務所のSEOで問い合わせを増やす取り組みは、検索順位を上げる技術より先に、事務所がどの相談を増やしたいのかを決め、その相談をする人に必要な情報を届けるところから始まります。この事例では、地域と業務を掛け合わせてページを設計し、税理士の切り替えや法人成りといった状況の言葉にコラムで応え、料金の考え方と担当する税理士の情報を業務ページで示しました。そのうえで、守秘義務と広告のルールをコラムの型に落とし込み、所長の時間を税務の予定に合わせて使い、ビジネスプロフィールの表記や口コミへの返信にも同じ基準を当てはめています。
結果として、問い合わせは件数だけでなく中身が変わり、顧問契約につながる相談が増えました。税理士事務所のWEBマーケターの方がこの事例から持ち帰れるのは、次の三つです。
- 問い合わせの記録に業務の分類と結果を残す
- 税理士という資格に固有のルールを、制約ではなく設計の前提として扱う
- 繁忙期を前提に一年の予定を組む
まずは過去1年分の問い合わせを業務ごとに分けてみてください。ホームページに足りない情報が、そこから見えてくるはずです。









