比較ポータルからの見積もり依頼は毎月届くのに、どれも数社との相見積もりで、話はいつも金額の比較から始まります。自社サイトはあっても、会社名で検索して訪れる人はわずかで、サイトから直接届く相談はほとんどありません。比較ポータルをやめるかどうかではなく、比較ポータルと自社サイトにそれぞれどんな役割を持たせるかが、この事例の分かれ目になりました。
比較ポータルに集客を頼っていたリフォーム会社の状況
このリフォーム会社は、郊外の市とその隣の町を商圏に、創業から二十年あまり営業を続けてきました。社員は十数名で、キッチンや浴室、トイレといった水回りの交換から、床や壁の張り替え、間取りの変更を伴う内装工事までを、自社の職人と協力業者で請け負っています。戸建てとマンションの両方に対応し、相談から現地調査、見積もり、施工、引き渡し後の点検までを一つの窓口で受けているのが特長です。工事の多くは、築二十年から三十年ほどの住まいで設備の傷みや使い勝手の悪さが気になり始めた方からの相談で、一件ごとに現地調査を行い、住まいの状態を見てから工事の内容を決めてきました。
集客の柱は長く、過去に工事をしたお客様からの紹介と、年に数回配布するチラシでした。そこに十年ほど前から加わったのが、リフォームを検討している人が複数の会社を比べて見積もりを依頼できる比較ポータルです。掲載を始めた当初は、紹介やチラシでは届かなかった層から問い合わせが入り、新しいお客様を増やす手段として手応えがありました。ところが掲載を続けるうちに、新規の問い合わせの多くを比較ポータルが占めるようになり、ほかの経路からの相談は目に見えて細っていきました。
比較ポータル経由の問い合わせには、はっきりとした傾向がありました。依頼した人のもとには複数の会社から連絡が入るため、返信の早さを競うところから始まり、現地調査に伺っても、最後は見積書の金額で比べられることが少なくありませんでした。問い合わせごとにかかる紹介料も積み重なり、成約に至らなかった案件の費用まで負担する形になっていました。営業担当が現地調査に時間を割いても、他社より少し高いという理由で見送られることが続き、現場の士気にも影響が出始めていました。
比較ポータルの中で積み上げてきた評価も、悩みの種でした。このリフォーム会社は、工事を終えたお客様から比較ポータル上で高い評価を受けており、その評価が新しい問い合わせを呼ぶ材料になっていました。しかし、その評価は比較ポータルの中にしか存在せず、掲載をやめれば新しいお客様の目には触れなくなります。評判を積み上げるほど比較ポータルから離れにくくなるという構造に、社長も担当者も気づいていました。
自社サイトは、七年ほど前に制作会社に依頼して作ったものでした。会社概要と施工事例の一覧、問い合わせフォームがあるだけの構成で、施工事例は写真が数枚ずつ並んだ十数件で止まっていました。WEBの担当は、事務と兼任の社員が一人です。比較ポータルの掲載ページは営業担当が写真や説明を更新していたため、会社の最新の姿を伝えていたのは、自社サイトではなく比較ポータルの側でした。担当者の手が回らなかったというより、自社サイトを更新しても問い合わせが増えるとは誰も考えておらず、優先する理由が見当たらなかったというのが実情です。
このころ社内では、比較ポータルの掲載をやめるべきかという議論が何度も出ていました。しかし、新規の問い合わせの多くがそこから来ている以上、掲載をやめれば仕事が途切れるおそれがあります。やめることも増やすこともできないまま、紹介料を払い続ける状態が続いていました。担当者に求められたのは、比較ポータルを否定することではなく、それに頼り切らなくても相談が届く入口を自社で持つことでした。社長が担当者に託したのは、比較ポータルからの問い合わせを減らすことではなく、会社として選ばれる理由を自社の言葉で伝えられる場所をつくることでした。
自社サイトから指名検索も問い合わせも生まれていなかった課題
取り組みの前に、担当者はGoogle Search Consoleで、自社サイトがどんな検索語句で表示されているのかを確かめました。会社名やその略称で検索される回数は月にわずかで、表示されている語句の大半も会社名そのものでした。地域名と工事の内容を組み合わせた検索では、自社サイトはほとんど表示されていませんでした。自社サイトは、会社名をすでに知っている人がたまに訪れるだけの場所になっていたのです。地域名と「リフォーム」を組み合わせた広い言葉で検索すると、上位には比較ポータルや、広い地域で営業する会社のページが並んでいました。同じ言葉で上位を争うことが、この会社にとって現実的な目標ではないことも、このとき見えてきました。
ここで担当者が注目したのが、指名検索でした。指名検索とは、会社名やサービス名を入力して検索することです。比較ポータルで見かけた会社や、近所の工事現場で名前を見た会社が気になった人は、会社名で検索して、その会社がどんな工事をしているのかを確かめることがあります。このとき自社サイトに判断の材料がそろっていれば、その人は比較ポータルを通さずに直接相談できます。反対に、材料が見つからなければ、比較ポータルに戻って他社と並べて比べることになります。
担当者は、紹介で相談に来たお客様にも、相談の前に何を見たのかを尋ねてみました。すると、知人から会社名を聞いたあと、会社名で検索して自社サイトを開いたものの、施工事例が少なかったため比較ポータルの掲載ページで評価や写真を確かめたという答えが、いくつも返ってきました。紹介という信頼の厚い経路で知ったお客様でさえ、判断の材料は比較ポータルで集めていたのです。チラシや紹介、現場で名前を見かけることなど、会社を知るきっかけはさまざまでも、相談に至るまでに会社名での検索を通ることが多いのであれば、指名検索は、会社のさまざまな接点を問い合わせにつなぐ結び目のような役割を持っていると担当者は考えました。


自社サイトを見直すと、指名検索で訪れた人を受け止められない理由がいくつも見つかりました。
- 会社名の表記の揺れ
自社サイト、比較ポータル、チラシ、名刺で、正式名称と通称、カタカナと漢字の表記が混在しており、お客様がどの名前で検索すればよいのかが定まっていませんでした。検索された名前と自社サイトの表記が一致しなければ、せっかく興味を持った人がたどり着けないことがあります。 - 判断の材料にならない施工事例
写真と工事の名前が並ぶだけで、どんな悩みを抱えたお客様に、なぜその工事を提案したのか、工期や費用がどのような条件で決まったのかが分かりません。比較ポータルの掲載ページのほうが新しい事例を載せていたため、会社名で検索して自社サイトを開いた人は、かえって情報が少ないと感じた可能性があります。 - 使いにくい問い合わせの入口
フォームは入力項目が多く、写真を添えて相談することも、現地調査の日程を希望することもできませんでした。電話番号はページの下部にしか載っていませんでした。
こうした状態では、比較ポータルで会社を知った人が会社名で検索しても、自社サイトで相談しようとは思いにくくなります。課題は、自社サイトの順位を上げること以前に、会社名を覚えてもらうことと、検索されたときに選ばれる材料を用意することにありました。担当者は、この二つを取り組みの軸に据えることにしました。
指名検索を増やすために取り組んだリフォームSEO対策
取り組みは、社長と担当者、現場の営業担当が話し合い、およそ一年をかけて段階的に進めました。目標に置いたのは、「リフォーム」のような広い言葉で上位に表示されることではなく、会社名で探され、自社サイトで比べたうえで直接相談してもらえる状態をつくることです。そのために、検索意図に合わせたページの作り直し、施工事例と地域ページの拡充、比較ポータルとの役割分担という三つの取り組みを組み合わせました。どれも担当者一人で抱えるのではなく、現場の営業担当が素材を出し、担当者がページに仕上げる分担で進めています。月に一度、社長を交えて進み具合と数字を確かめる場も設けました。順番は、費用のかからないものから手を付けることにしました。最初の二か月で会社名の表記の統一とページ構成の見直しを終え、その後は施工事例を毎月積み重ねながら、比較ポータルとの役割分担と問い合わせの入口を整えていきました。広告の出稿やサイトの全面的な作り直しは行わず、既存のサイトを生かして進めています。
検索意図に合わせたキーワード設計とページ構成の見直し
最初に取りかかったのは、どんな言葉で探されたときに自社サイトが答えるべきかを整理することでした。担当者は、過去の問い合わせの内容と、営業担当が現地調査で聞かれた質問を書き出し、お客様が相談の前にどんな言葉で情報を探しているのかを推し量りました。その結果、検索の目的は次の四つに分けられ、それぞれに答えるページを決めました。
| 検索の目的 | 答えるページ |
|---|---|
| 工事の内容と地域から会社を探す | 工事の種類ごとのページ |
| 困りごとから解決策を探す | 施工事例 |
| 費用や期間の目安を知りたい | 工事の種類ごとのページと施工事例 |
| 会社名で確かめに来る | トップページと会社紹介のページ |
このうち、会社名で確かめに来る検索に答えるページは、ほとんど用意されていませんでした。そこで、トップページと会社紹介のページを、会社名で訪れた人が最初に知りたいことに答える形に作り直しました。どの地域でどんな工事を、どんな体制で請け負っているのか、職人は自社にいるのか、工事の後にどんな点検を行っているのかといった、比較ポータルの掲載ページでは伝えきれない会社の中身を、トップページから迷わずたどれるようにしています。会社紹介のページには、代表と職人の顔写真、創業からの歩み、加入している保証や工事後の点検の内容を載せ、初めて会社名を知った人が、どんな人たちが工事をするのかを想像できるようにしました。
工事の内容と地域から探す検索には、工事の種類ごとのページで応えることにしました。キッチン、浴室、トイレ、内装、間取りの変更という工事ごとにページを分け、それぞれに次の内容をまとめています。
- 工事の流れ
- 工期の目安
- 費用が変わる条件
- 関連する施工事例
- 担当する職人と営業の紹介
費用については、価格表を載せるのではなく、既存の設備の状態や選ぶ設備のグレード、配管の移設の有無によって金額が変わる仕組みを説明する形にしました。金額だけで比べられる状態から抜け出すための書き方です。
困りごとから探す検索と、費用や期間の目安を知りたい検索には、新しい解説記事を大量に書くのではなく、施工事例と工事の種類ごとのページで答えることを選びました。浴室の寒さや、キッチンの収納の少なさ、段差のつまずきといった困りごとは、実際の施工事例の中で、どう解決したのかという形で説明するほうが、読む人にとって具体的で、会社の仕事ぶりも伝わると考えたからです。工事の種類ごとのページから関連する施工事例へ、施工事例から担当者の紹介と問い合わせの入口へと、内容のつながりに沿ってページ同士をつないでいます。
工事の種類ごとのページと施工事例を手作業でつなぎ続けると、事例が増えるほど更新の手間がかさみます。WordPressで施工事例を公開しているなら、Kashiwazaki SEO Related Postsが、タグやカテゴリ、タイトル、抜粋、URLのパスなどを分析して関連する投稿を選び、記事の下に並べます。投稿タイプごとに設定を分けられるので、施工事例のページでの並べ方を、ほかの記事とは別に決められます。
ページのタイトルには、工事の内容と地域名に加えて、会社名を必ず入れました。検索結果で目にする回数が増えれば、会社名を覚えてもらうきっかけにもなると考えたためです。あわせて、自社サイト、比較ポータルの掲載ページ、チラシ、名刺、見積書で、会社名の表記を一つにそろえました。どこで会社を知った人も、同じ名前で検索すれば自社サイトにたどり着けるようにするためです。
施工事例ページと地域ページの拡充
次に力を入れたのが、施工事例の作り直しです。問い合わせの内容を振り返ると、会社名で訪れた人が確かめようとしていたのは、この会社が自分と似た住まいでどんな工事をしてきたのかでした。そこで施工事例は、写真を並べるだけのページから、一件ごとに相談の経緯を読めるページへと変えました。
事例ごとに、お客様が最初に何に困っていたのか、現地調査で何が分かり、どんな選択肢を示して、なぜその工事に決まったのかを、営業担当の言葉で書いています。提案したものの見送った工事や、予算に合わせて工事の範囲を絞った経緯も、あえて残しました。会社の考え方が伝わるのは、行った工事そのものより、判断の理由のほうだと考えたからです。事例には担当した営業と職人の名前を添え、スタッフ紹介のページへつなげました。Googleが公開している「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」でも、誰がコンテンツを作成したのかを明確にすることが勧められています。
担当者の名前を出したのは、リフォームを頼む側が何を見て会社を選んでいるのかを踏まえてのことでもあります。住宅リフォーム推進協議会の2025年度の消費者実態調査では、リフォームを実施した人が事業者選びで重視した点として「担当者の対応・人柄」を挙げた人が44.0%で最も多く、「工事価格が安いこと」よりも「工事価格の透明さ・明朗さ」を挙げた人のほうが多い結果でした。
誰が担当し、費用がどんな条件で決まるのかを事例の中で示すことは、こうした選ばれ方に沿ったものでした。
施工事例を毎月増やし続けるために、作る手順も決めました。
- STEP 1
現場の記録
工事の引き渡しが終わると、営業担当が、最初の困りごと、提案した内容、決め手になった点、見送った案を短く書き留めます。
- STEP 2
写真の撮影
職人が、着工前と完成後の写真を同じ位置と角度で撮ります。
- STEP 3
ページの公開
担当者が記録と写真を受け取って文章を整え、ページのタイトルに地域名と住まいの種類、工事の内容、会社名を入れて公開します。
写真や声の掲載については、契約の段階でお客様に説明し、了承を得たうえで進めるようにしました。
地域ページの扱いには慎重になりました。商圏の市や町ごとにページを作れば、地域名で検索されたときの入口は増えます。しかし、中身がほとんど同じページを地域の数だけ並べると、Googleのスパムに関するポリシーで「誘導ページの不正使用」とされる形に近づきます。ポリシーには、特定の地域や都市を対象としたページを複数持ち、そこから一つのページへユーザーを誘導することや、内容が類似する複数のページを作成することが、例として挙げられています。


そこでこのリフォーム会社は、地域名だけを差し替えたページは作らず、実際に施工事例がある地域に限ってページを設けました。地域ページには、その地域で手がけた施工事例、その地域の住まいで多かった相談、現地調査に伺うまでの流れを載せています。事例が増えるにつれて地域ページの中身も厚くなり、地域ごとに違う情報を持つページになっていきました。
比較ポータルと役割を分けた自社サイトへの導線設計
比較ポータルとの関係も見直しました。掲載をやめるのではなく、役割を分けることにしたのです。比較ポータルは、まだこの会社を知らない人と出会う場所です。自社サイトは、会社名で検索した人が、施工事例や考え方を確かめて直接相談する場所です。二つを同じ役割で競わせるのではなく、比較ポータルで出会った人が、自然に会社名で検索したくなる流れをつくることを目指しました。


比較ポータルの掲載ページでは、掲載のルールで認められている範囲で会社名の表記をそろえ、施工事例の紹介文にも自社サイトと同じ言葉を使いました。このリフォーム会社が使っていた比較ポータルでは、掲載ページに自社サイトのURLを載せることができなかったため、覚えてもらう対象を会社名に絞っています。
比較ポータルの外にある接点でも、会社名で検索してもらう工夫を重ねました。
- 提案書と見積書
現地調査の後に渡す書類に、会社名で検索すると同じ工事の施工事例を見られることを一行添えました。 - 工事現場の看板
会社名を大きく入れ、近所の人の目に留まるようにしました。 - 点検の案内
過去に工事をしたお客様に送る案内に、新しい施工事例の紹介を載せました。 - 名刺
職人や営業担当の名刺にも、同じ表記の会社名を入れました。
こうした接点はどれも、URLを入力してもらうのではなく、会社名で検索してもらうことを前提にしています。電話を受けたときには、どこで会社を知ったのかを尋ねて記録する決まりにしました。この記録が、後で変化を読み解くときの大切な手がかりになります。
自社サイトの問い合わせの入口も作り直しました。入力項目を減らし、困っている箇所の写真を添えて相談できるようにし、現地調査の希望日を選べるようにしました。電話番号は各ページの上部に置き、工事の種類ごとのページと施工事例のページから、そのまま相談へ進めるようにしています。会社名で検索して訪れた人が、比較ポータルに戻らずに相談を終えられることを、導線の条件にしました。問い合わせのフォームには、相談したい工事の種類を選ぶ欄を設け、どのページから相談に進んだのかも分かるようにしています。Google ビジネス プロフィールも、会社名、住所、電話番号、営業時間を自社サイトと同じ表記にそろえ、施工事例の写真を定期的に加えています。会社名で検索されたときに表示されることのある店舗の情報が、自社サイトと食い違わないようにするためです。
指名検索と直接の問い合わせが増えるまでの変化
取り組みの成果は、少しずつ表れました。ここで示す数値は、複数の支援経験をもとに再構成したモデルケースの一例で、実在する会社の実績ではありません。変化を測るために、担当者はGoogle Search Consoleで会社名を含む検索語句の表示回数とクリック数を毎月記録し、あわせて問い合わせがどの経路から届いたのかを、電話、フォーム、比較ポータル、紹介に分けて記録しました。比べる相手は、季節の影響をそろえるため、前の年の同じ月としています。導線設計のときに決めた、会社を知ったきっかけの聞き取りも、同じ記録にまとめています。会社名で検索される回数は、チラシを配った月や、大きな現場の工事が続いた月にも増えます。そのため担当者は、チラシの配布日や現場の看板を出した時期も書き添え、数字の動きが取り組みによるものか、別のきっかけによるものかを見分けられるようにしていました。数字には表れない変化も見落とさないように、営業担当が現地調査で感じた相談の中身の違いも、月に一度の確認の場で共有しています。
指名検索と自然検索からの流入の増加
取り組みを始めてから三か月ほどは、数字に目立った変化はありませんでした。ページを作り直しても、検索結果に反映されるまでには時間がかかります。担当者はこの期間、施工事例を月に数件ずつ増やすことに集中しました。社内からは、本当に意味があるのかという声も出ましたが、月に一度の確認の場で、施工事例のページの表示回数が少しずつ増えていることを示し、方針を変えずに続けました。よく読まれた施工事例を調べると、浴室の寒さを和らげた工事や、段差をなくして動線を見直した工事のように、困りごとがはっきりした事例が上位に並んでいました。担当者はこの傾向を営業担当に伝え、似た相談を受けた現場では、決め手になった点を特にていねいに書き留めてもらうようにしました。
変化が見え始めたのは、半年を過ぎたころです。会社名を含む検索語句の表示回数が前の年の同じ月を上回るようになり、一年後には、一例として、およそ3倍まで増えました。チラシを配った月の山はそれまでもありましたが、配布のない月でも表示回数が前の年を上回り続けたことから、取り組みの影響が大きかったと担当者は判断しています。会社名に「施工事例」「評判」「キッチン」などを組み合わせた検索も現れ、会社名で探す人が、確かめたい内容まで絞って検索していることがうかがえました。
会社名以外の検索でも、自社サイトが表示されるようになりました。工事の種類ごとのページは、地域名と工事の内容を組み合わせた検索で表示されることが増え、施工事例のページも、困りごとを入力した検索で読まれるようになりました。自然検索から自社サイトを訪れた人の数は、一例として、取り組み前の2倍強になっています。Google Search Consoleで検索から訪れたページを見ると、以前はトップページがほとんどでしたが、一年後には施工事例と工事の種類ごとのページから訪れる人が大きな割合を占めるようになりました。
地域名と工事の内容を組み合わせた検索で自社のページがどこに出ているかは、検索する場所によって変わることがあります。SEO検索順位チェックツールは、URLとキーワードを入れると、Google検索の上位100位までに入っているかを調べ、地域を市区町村の単位まで指定して確かめられます。キーワードは一度に5つまで計測できるので、工事の種類ごとのページを、商圏の市の名前と組み合わせて定点観測する使い方ができます。
担当者が重視したのは、会社名以外の検索で訪れた人が、その後に会社名で探し直しているかどうかでした。問い合わせの際に会社を知ったきっかけを尋ねると、比較ポータルやチラシで名前を見て会社名で調べたという答えに加えて、困りごとを調べているうちに施工事例にたどり着き、あとから会社名で調べ直したという答えが目立つようになりました。施工事例が、会社名を覚えてもらう入口としても働き始めたことが分かります。
比較ポータルへの依存度と問い合わせの質の変化
問い合わせの経路にも変化が表れました。取り組みから一年後の数字を、取り組み前と並べると次のとおりです。
| 項目(一例) | 取り組み前 | 取り組みから一年後 |
|---|---|---|
| 自社サイトのフォームと電話から直接届く問い合わせ | 月2件前後 | 月9件前後 |
| 新規の問い合わせに占める比較ポータル経由の割合 | およそ7割 | 3割台 |
比較ポータルからの問い合わせが大きく減ったのではなく、自社サイトからの相談が増えたことで、割合が入れ替わった形です。現地調査から成約に至る割合も、経路によって差が出ました。一例として、比較ポータル経由の相談が2割台だったのに対し、自社サイトから直接届いた相談は5割前後で成約に至っています。
比較ポータルの掲載は、やめずに続けています。ただし、成約につながりにくかった地域への掲載を絞り、掲載のプランも見直して、紹介料の負担を抑えました。比較ポータルを、新しいお客様と出会い、会社名を覚えてもらう入口と位置づけ直したことで、掲載を続けるかどうかを感覚ではなく記録した数字で判断できるようになりました。一年間に支払った紹介料は、一例として、取り組み前の年と比べて4割ほど少なくなっています。比較ポータル経由の相談でも、現地調査の後に渡す提案書に施工事例の案内を添えたことで、会社名で検索して事例を読んでから連絡をくれるお客様が現れました。比較ポータルで出会ったお客様との商談も、金額だけの比較から一歩進んだものになっていったのです。
問い合わせの中身も変わりました。自社サイトから届く相談の多くは、施工事例を読んだうえで、同じような浴室にしたい、その事例を担当した人に見てもらいたいといった、具体的な要望を添えたものでした。相見積もりを前提にした問い合わせは減り、現地調査の段階から、工事の範囲や設備の選び方について話し合えるようになりました。営業担当が、金額の説明より提案の中身に時間を使えるようになったことは、数字には表れにくい変化です。
一方で、新しい課題も出てきました。自社サイトからの相談が増えたことで、返信や現地調査の日程の調整が特定の営業担当に集中し、対応が遅れる場面が出てきたのです。担当者は、問い合わせの受け付けから現地調査の手配までを事務の側で引き受ける手順を整え、対応の速さを保つようにしました。直接の相談は、返信の速さが比較ポータル以上に信頼を左右すると考えたためです。
指名検索の増加につながった要因
このモデルケースを私たちの立場から振り返ると、指名検索が増えた要因は、検索順位が上がったことそのものよりも、会社名に触れる機会と、検索されたあとに選ばれる材料の両方を増やしたことにありました。どちらか一方だけでは、この変化は起きなかったと考えています。会社名に触れる機会だけを増やしても、検索した先の自社サイトに材料が無ければ、お客様は比較ポータルに戻ってしまいます。反対に、自社サイトの中身だけを充実させても、会社名で検索する人が増えなければ、その中身を読む人は限られます。


効いたと考えられるのは、まず会社名に触れる接点を増やしたことです。比較ポータルの掲載ページ、提案書と見積書、現場の看板、点検の案内と、お客様が会社名を目にする場面は、もともといくつもありました。そのすべてで表記をそろえ、会社名で検索すれば詳しい情報が見られることを添えたことで、名前を見た人が検索するきっかけが生まれました。指名検索は、検索の工夫だけで増えるものではなく、会社名を知る機会の積み重ねから生まれるものだと、この事例は示しています。
施工事例が、比べる材料として働いたことも大きな要因です。判断の理由と担当者の名前が書かれた事例は、会社名で検索した人にとって、比較ポータルでは得られない情報でした。相談の前に会社の考え方を知ることができたため、問い合わせの段階ですでに候補が絞られ、相見積もりになりにくくなったと考えられます。同じ事例は、営業担当が提案書に添える資料としても使われ、集客と営業の両方で役に立ちました。施工事例は、一度作れば長く読まれ続けることがあるという点でも、比較ポータルへの掲載とは性質が違います。紹介料のように問い合わせのたびに費用がかかるのではなく、積み上げた事例がそのまま会社の資産として残っていきます。
比較ポータルと同じ土俵で競わなかったことも、結果につながりました。広い言葉で比較ポータルより上に表示されることを目指していたら、成果が出るまでにもっと長い時間がかかり、取り組みそのものが続かなかったかもしれません。比較ポータルを出会いの場として残し、自社サイトを確かめて相談する場と位置づけたことで、それぞれに合った役割を果たせるようになりました。地域名だけを差し替えたページを量産しなかったことも、自社サイトの信頼を損なわずに済んだ理由の一つです。
取り組みを続けられた体制も見逃せません。施工事例の素材は現場を知る営業担当が出し、ページに仕上げるのは担当者という分担にしたことで、事務と兼任の担当者一人でも更新を止めずに済みました。毎月の数字を社長と一緒に確かめる場があったことで、変化が小さい時期にも方針がぶれませんでした。
振り返ると、もっと早く手を付けておけばよかったこともあります。問い合わせの経路と、会社を知ったきっかけの記録は、取り組みを始めた月から整えましたが、それ以前の記録がほとんど無かったため、取り組み前の状態は推定に頼る部分が残りました。会社名の表記の統一も、看板や車両、古いチラシまで行き渡るには時間がかかりました。これから同じ取り組みを始めるなら、記録の仕組みと表記の統一を、ページの見直しより先に済ませておくことを勧めます。
この事例の進め方は、どのリフォーム会社にもそのまま当てはまるわけではありません。商圏の広さや、職人を自社で抱えているかどうか、得意とする工事の種類によって、施工事例に書ける内容も、会社名に触れてもらえる場面も変わります。それでも、会社名を知るきっかけと、検索したあとに確かめられる材料の両方を見直すという考え方は、会社の規模や工事の種類を問わず出発点にできると考えています。
同じように比較ポータルに頼っているリフォーム会社で、指名検索が少ないと感じているなら、検索対策が足りないからとは限りません。会社名がどこで目に触れ、検索した人が自社サイトで何を確かめられるのかを見直すことが、最初の一歩になります。
まとめ
比較ポータルに集客を頼っていたこのリフォーム会社は、比較ポータルをやめるのではなく役割を分け、会社名で探され、自社サイトで選ばれる状態をつくることで、直接の相談を増やしていきました。
取り組みの中心は、会社名で確かめに来る人に答えるページ構成への見直し、判断の理由と担当者の名前が分かる施工事例、施工事例に裏付けられた地域ページ、そして提案書や現場の看板まで含めた、会社名で検索してもらうための導線でした。成果が数字に表れるまでには半年ほどかかりましたが、指名検索の増加とともに、相見積もりに頼らない相談が増え、比較ポータルの掲載も数字で判断できるようになりました。成果の数値はモデルケースの一例ですが、変化が表れた順番は、自社の取り組みの進み具合を測る目安として使えます。
指名検索を増やすことは、検索順位だけの話ではありません。会社名に触れる機会と、検索された後に選ばれる材料を、一つずつ増やしていくことが、比較ポータル頼みの集客から抜け出す近道です。自社の状況に置き換えるなら、まず会社名がどこで目に触れているのかを書き出し、その名前で検索した人が自社サイトで何を確かめられるのかを見直すところから始めてみてください。







