クリニックのホームページは開設時に作ったまま、集患はポータルサイトへの掲載料とリスティング広告に頼っている。広告費は毎年少しずつ増えているのに、新患の数は横ばいで、止めれば予約が減るのが分かっているから止められない。多くのクリニックのWeb担当者が、この状態を抱えたまま日々の業務に追われています。
クリニックの集患を広告費に頼り続けると、いずれ収益を圧迫する
クリニックの新患獲得は、この十年ほどで検索が主な入口の一つになりました。症状や診療科目と地域名を組み合わせて検索し、上位に出てきた医院のページと地図の評価を見比べて予約する、という行動が当たり前になっています。厚生労働省の受療行動調査(病院の患者が対象)で、ふだん医療機関にかかる時の情報の入手先を尋ねた結果でも、家族や知人の口コミに次いで多いのが医療機関が発信するインターネットの情報で、外来患者のおよそ3割(28.8%)が挙げています。医療機関以外が発信するインターネットの情報を含めれば、検索を経由する経路はさらに広がります。ところが多くのクリニックでは、検索結果の上位に自院のホームページが出てこないため、その入口を広告とポータルサイトで買い続けています。買っている間は患者が来ますが、支払いを止めた瞬間に入口ごと消えるという構造は、経営の視点で見ると危うい状態です。
出典: 厚生労働省 令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況 表1「外来-入院別にみたふだん医療機関にかかる時の情報の入手先」
ポータルサイトと広告費への依存がコストを押し上げる仕組み
医療系のポータルサイトは、掲載料を払えば地域と診療科目で探す患者の目に触れる場を用意してくれます。開院直後や、まだホームページの評価が育っていない時期には合理的な選択です。問題は、そこから抜け出す設計をしないまま年数が経つことにあります。ポータルの中での表示順は掲載プランに左右されることが多く、同じ地域に競合する医院が増えるほど、目立つ位置を保つための費用は上がりがちです。リスティング広告も同じで、地域名と診療科目を組み合わせたキーワードは、近隣の医院どうしで入札が競合するため、クリック単価は上がりやすくなります。
この構造の厄介なところは、費用が増えていることに気づいていても、止める判断がしにくい点です。広告経由の新患が全体の何割を占めているかを把握していれば、止めた場合の影響が見積もれますが、多くの医院では予約経路を分けて数えていません。結果として、広告費は固定費のように毎月流れ続け、診療報酬が伸びない時期には利益を直接圧迫します。しかも、支払ってきた費用は医院の資産として何も残りません。同じ金額をホームページの改善に投じていれば、公開したページは翌年以降も患者を連れてきますが、広告は止めた月に効果が消えます。

さらに、患者側の行動も変わっています。ポータルの一覧で医院を見つけた患者が、予約の前に医院名で検索し直し、ホームページと地図の口コミを確認します。ここでホームページの情報が古かったり、診療内容の説明が薄かったりすると、せっかく広告費を払って呼び込んだ患者を最後の一歩で取りこぼします。広告に頼る医院ほど、その受け皿であるホームページが手薄になっているという矛盾が、費用対効果をさらに悪化させています。
過去にSEOを試して成果が出なかった本当の理由
広告費への危機感から、一度はSEOに取り組んだことのあるクリニックは少なくありません。それでも成果が出ずに元の広告依存に戻ってしまう医院には、共通した原因があります。ひとつは、診療科目ごとのページを持たないまま、ブログ記事だけを増やしたことです。健康情報の記事をいくら書いても、患者が実際に検索する「地域名と診療科目」「地域名と症状」の言葉に対応するページが無ければ、医院として評価される場所がありません。記事は読まれても、予約につながる導線が無いまま終わります。
二つめは、医療広告ガイドラインを知らない制作会社やライターに任せてしまったことです。医療機関のウェブサイトは、2017年に成立した医療法等の一部を改正する法律によって、他の広告媒体と同じく広告規制の対象になりました。患者の体験談や治療前後の写真、他院より優れているという表現などは、医療広告として掲載できません。一般の業種と同じ感覚で「患者様の声」や「地域No.1」を並べたページは、後から修正や削除が必要になり、そこに費やした制作費は無駄になります。過去に取り組んだSEOが「途中で止まった」医院の多くは、この修正対応で担当者が疲弊し、施策全体が頓挫しています。
三つめは、成果を測る指標が順位だけだったことです。順位が上がっても予約が増えなければ、院長にとってその施策は失敗です。診療科目ごとに、検索からの流入、予約フォームの送信、電話のタップ数まで追う体制が無いと、何が効いて何が効いていないのかが分からず、続ける根拠を院内で説明できなくなります。SEOそのものが効かなかったのではなく、医療機関に合った設計と測り方をしていなかったことが、成果が出なかった本当の理由です。
今回モデルケースとして紹介する、地域密着型クリニックが抱えていた課題
ここから追っていくのは、複数のクリニックを支援してきた経験をもとに再構成したモデルケースです。特定の医院の事例をそのまま掲載しているものではなく、社名や数値は実在の医院を示すものではありません。ただし、課題の構造と施策の順序、成果の表れ方は、実際の支援で繰り返し観測してきたものに沿っています。
想定するのは、郊外の住宅地に開院して十年ほどが経つ、医療法人が運営する内科と小児科のクリニックです。常勤医は理事長である院長ともう一名で、近隣には同じ診療科目を掲げる医院が数院あります。新患の入口は、開院時から契約しているポータルサイトと、数年前に代理店に勧められて始めたリスティング広告が中心でした。院長は広告費が毎年増えていることを気にしていましたが、止めた場合に何が起きるかが読めないため、契約を続けていました。
ホームページは開院時に制作会社が作ったもので、トップページ、院長あいさつ、診療案内、アクセス、お知らせという構成でした。診療案内は一枚のページに内科と小児科の説明が並び、予防接種や健康診断、生活習慣病の管理といった、患者が実際に検索で使う言葉に対応するページはありません。院長の経歴は出身大学と勤務歴が数行あるだけで、専門とする領域や所属学会、医療法人としての運営体制は書かれていませんでした。スマートフォンで開くと文字が小さく、予約はページの最下部にある電話番号を探して掛ける形でした。
Web担当を任されていたのは事務長で、制作会社との窓口を兼ねていましたが、更新はお知らせの投稿が中心で、検索からどれだけの人が来ているかは見たことがありませんでした。過去に一度、ホームページ制作会社の提案でブログ記事を増やす取り組みをしましたが、症状の解説記事が数十本たまっても予約は変わらず、途中で「患者様の声」として掲載していた文章が医療広告ガイドラインに触れる可能性を指摘され、対応に追われた経緯があります。この経験から、院内には「SEOは効かない」という空気が残っていました。
課題を整理すると、検索で見つけてもらうためのページ構成が無いこと、医院と医師の信頼性を示す情報がほとんど公開されていないこと、そして広告規制を踏まえた情報発信の基準が院内に無いことの三つに集約されます。広告費の問題は結果であって、原因はこの三つにありました。
SEO対策を外部の専門家に依頼する際、クリニックが確認すべきポイント
院内にWeb専任の担当者を置けるクリニックは多くありません。事務長や受付責任者が兼務する体制で成果を出すには、外部の専門家に何をどこまで任せるかを最初に決めておく必要があります。ここで判断を誤ると、記事だけが増えて予約は変わらない、あるいは広告規制に触れる表現の修正に追われる、という前回と同じ失敗を繰り返します。依頼先を選ぶ段階で確認しておくべきことを整理します。
クリニックのSEOコンサルティングでは具体的に何を行うのか
クリニック向けのSEOコンサルティングと聞くと、記事を書いてもらうサービスを思い浮かべる方が多いのですが、記事の制作は工程の一部にすぎません。実際の工程は、次の順に進みます。
- 現状の診断
Search Consoleのデータからいまどの言葉で表示されているかを確認し、既存ページの評価、近隣の競合医院のページ構成、地図の表示状況を調べる - キーワードの洗い出しと優先順位付け
診療科目と地域名、症状名を掛け合わせたキーワードを洗い出し、医院が受けたい患者像に合わせて優先順位を付ける - サイト構造の設計
診療科目や診療内容ごとに独立したページを持つ構造へ組み替え、各ページに何を書くかを決める - 医師への取材と記事の制作
実際の診療で患者から繰り返し受ける質問、受診をためらう理由、初診で説明している内容を聞き取って原稿にし、医師の確認と監修を経て公開する。監修者として医師の氏名と経歴を明示する - 計測と月次の報告
検索からの流入、予約フォームの送信数、電話番号のタップ数を診療科目別に計測し、毎月の報告で何が起きたか、次に何をするかを共有する
あわせて、Googleビジネスプロフィールの情報整備と口コミへの返信方針の設計、表示速度やスマートフォンでの見え方といった技術面の改修も範囲に含まれます。
つまり、依頼先が担うのは「記事を書くこと」ではなく、「患者が検索する言葉と医院のページを対応させ、その対応関係を計測しながら育てること」です。見積りに記事の本数しか書かれていない提案は、この全体像を持っていない可能性があります。診断の内容、サイト構造の設計、計測と報告の方法が提案に含まれているかを最初に確認してください。
医療広告ガイドラインを理解した業者かどうかの見極め方
クリニックのSEOで依頼先を選ぶ際に、最も重要で、最も見落とされやすいのが医療広告ガイドラインへの理解です。医療法第6条の5と医療法施行規則第1条の9は、医業や病院・診療所に関する広告について、次の広告を禁止しています。
- 虚偽の広告
- 他の病院や診療所と比較して優良である旨の広告
- 誇大な広告
- 公の秩序または善良の風俗に反する内容の広告
- 患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療の内容や効果に関する体験談の広告
- 治療の内容や効果について患者を誤認させるおそれがある治療前後の写真などの広告
厚生労働省の「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」、いわゆる医療広告等ガイドラインは、これらを具体例とともに示した文書で、2026年3月に最終改正されています。


この規制がホームページにも及ぶことを知らない業者は、いまだに少なくありません。もともと医療機関のウェブサイトは広告規制の対象外として自主的な取り組みに委ねられていましたが、2017年に成立した医療法等の一部を改正する法律により、ウェブサイトも他の広告媒体と同様に規制の対象となりました。同時に、患者が自ら求めて入手する情報については、一定の要件を満たせば広告可能事項の限定が解除される仕組みが設けられています。要件は次の表のとおりで、自由診療の情報には追加の記載が求められます。この限定解除の要件を説明できるかどうかが、業者の理解度を測る分かりやすい試金石になります。
| 限定解除の要件 | 内容 | 適用範囲 |
|---|---|---|
| 第1号 | 医療に関する適切な選択に資する情報で、患者が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトなどであること | すべての診療 |
| 第2号 | 表示する情報について患者が容易に照会できるよう、問い合わせ先を明示すること | すべての診療 |
| 第3号 | 通常必要とされる治療の内容、費用などの情報を提供すること | 自由診療の情報のみ |
| 第4号 | 治療の主なリスク、副作用などの情報を提供すること | 自由診療の情報のみ |
見極めの方法は難しくありません。提案の段階で、「患者様の声を載せたい」「地域で一番と書きたい」「症例写真をビフォーアフターで並べたい」と伝えてみて、どう答えるかを見ます。ガイドラインを理解した業者であれば、体験談は掲載できないこと、最上級の比較表現は使えないこと、治療前後の写真は誤認を招く形では載せられず、載せる場合も治療内容や費用、リスクの説明が必要になることを、その場で説明します。逆に「他院もやっているから大丈夫」と答える業者は、公開後に医院側が修正責任を負うことになります。厚生労働省は医療機関のウェブサイトに関する通報窓口として医療機関ネットパトロールを設けており、指摘は競合や患者からも届きます。規制を知らない業者に任せるリスクは、制作費の無駄では済みません。
導入から成果が出るまでに実施したSEO対策の流れ
モデルケースのクリニックでは、院長と事務長との初回の打ち合わせで、広告費の推移と、予約がどの経路から来ているかの概算を出すところから始めました。数字を並べてみると、新患の大半がポータルと広告経由で、ホームページから直接予約した患者は医院名で検索した既存患者にほぼ限られることが分かりました。この時点で院長が納得したのは、SEOを始めることではなく、いまの集患構造が続かないことでした。そこから、四つの段階に分けて施策を進めています。
現状分析から始めたキーワードとエリアの設計
最初の一か月は、施策よりも分析に時間を使いました。Search Consoleを連携し、医院名以外でどのような言葉で表示されているかを確認すると、地域名と診療科目の組み合わせではほとんど表示されておらず、わずかに出ている検索語も順位が低い状態でした。近隣の競合医院のホームページを調べると、上位に表示されている医院は診療内容ごとにページを分けており、予防接種や健康診断のページが個別に評価されていることが分かりました。
キーワードの設計では、地域名と診療科目の組み合わせを軸にしつつ、患者が症状や目的で検索する言葉を診療内容ごとに洗い出しました。内科であれば発熱外来、生活習慣病、健康診断、予防接種、小児科であれば乳幼児健診、予防接種のスケジュール、夜間や休日の対応といった具合です。ここで重要だったのは、検索される回数の多さではなく、医院が実際に受け入れられる患者かどうかで優先順位を決めたことです。院長が診たい患者像と、医院の設備や人員で対応できる範囲を先に確認し、対応できない診療内容の言葉は最初から外しました。
診察室で患者から繰り返し受ける質問は、検索結果の「他の人はこちらも質問」にもほぼ同じ形で現れます。再検索キーワード調査ツールは、地域名や診療内容の言葉で検索した結果に表示される関連キーワードを取り出せるので、医師への取材で拾った質問と、検索側で実際に打ち込まれている言葉を突き合わせて、診療内容ごとのページに載せる見出しを決められます。候補を持って取材に臨むと、短い時間で医師の確認が済みます。
エリアの設計も同時に行いました。クリニックの商圏は徒歩や自転車、車で来院できる範囲に限られます。医院の所在地を中心に、患者が実際に住んでいる町名や最寄り駅を洗い出し、どの地域名をページに含めるかを決めました。広い市名だけで勝負すると競合が多く、駅名や町名まで絞ると検索する人は減りますが、来院する可能性の高い患者に届きます。両方を段階的に狙う形で設計しています。
診療科目ごとのページ構成とホームページの見直し
二か月目からサイト構造の組み替えに入りました。一枚だった診療案内を、内科と小児科の柱となるページに分け、その下に診療内容ごとの個別ページを配置する構成に変えています。柱のページには、その診療科で対応できる症状と診療の流れ、担当する医師を記載し、個別ページには次の内容を、患者が検索する言葉に合わせて書きました。
- 対象となる患者
- 受診の目安
- 診察で行うこと
- 必要な持ち物
- 費用の考え方
予防接種のページには、対象年齢と接種間隔、予約の方法を載せ、健康診断のページには、対応している検査の種類と受け方をまとめています。


あわせて、ホームページ全体の見直しも行いました。スマートフォンでの表示を前提に文字の大きさと余白を調整し、どのページからも予約と電話に進めるように、画面下部に固定の予約ボタンを置きました。診療時間と休診日、アクセスの情報は全ページで同じ表記に統一し、Googleビジネスプロフィールに登録している内容とも揃えています。医院名、住所、電話番号の表記が媒体ごとに揺れていると、同じ医院として認識されにくくなるためです。
ページを増やす前に、URLの構造と内部リンクの設計を確定させたことも、後の運用を楽にしました。診療科目の柱から個別ページへ、個別ページから予約へ、という導線を先に決めておくことで、後から診療内容が増えても同じ型で追加できます。制作会社が管理していたホームページは、権限の引き継ぎを受けて私たちが直接更新できる体制にし、事務長には公開前の確認だけをお願いする形に切り替えました。
診療内容が増えたとき、柱のページに書き足すのか、別ページに切り出すのかを都度判断することになります。ピラクラ(トピッククラスター判定)は、新しいキーワードをピラー(柱)に組み込むべきかクラスター(個別ページ)として独立させるべきかを判定し、既存ページとの重複も同時に確認できるので、先に決めた「柱から個別ページへ、個別ページから予約へ」の型を崩さずにページを追加していけます。
症例や医師の実績を活かしたE-E-A-Tの強化
医療は、検索エンジンが人の健康や生活に大きく影響する領域として特に厳しく評価する分野です。Googleは有用なコンテンツの評価の考え方として経験、専門性、権威性、信頼性を挙げており、医療の情報では誰が書いたのか、その人物は実在するのか、責任を持てる立場かが問われます。モデルケースの医院でも、この点が最も手薄でした。院長の経歴は数行しかなく、もう一名の常勤医の情報はほとんど公開されていなかったため、まず医師のページを作り直すところから着手しています。
医師のページを作り直すとき、経歴や資格を文章で並べるだけでは、検索エンジンや生成AIはそれを誰のどんな専門性かとして読み取れません。Kashiwazaki SEO ProfilePage Makerは、Schema.orgのProfilePageとPersonの構造化データを完全な形で出力するプロフィールページを作るプラグインで、氏名、肩書、経歴に加えて資格、論文、講演、取材といった実績を項目として登録できます。医療法上広告できる略歴などの情報を、人が読む表示と機械可読なデータの両方で一致させたいときに向いています。
医師の経歴は、医療法第6条の5第3項第9号で、診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴などが広告可能な事項として認められています。モデルケースでは、出身大学と勤務歴に加えて、専門としてきた領域、これまで携わってきた診療の内容、所属している学会、取得している資格を、事実の範囲で丁寧に書き出しました。専門医の資格については注意が必要で、広告できるのは日本専門医機構が認定する基本領域の専門医と、広告告示の改正前に厚生労働省へ届け出た学会などが認定する資格に限られます。「厚生労働省認可の専門医」といった表現は、専門医を認定するのは学会や専門医機構であって厚生労働省ではないため、ガイドラインで虚偽広告の例として挙げられており、認定団体を書かずに単に「○○専門医」とだけ表記することも誇大広告として指導の対象になります。資格名は認定団体の正式名称で記載し、確認できないものは載せない方針にしました。
医師の透明性を高める手段として、医師が個人で運営しているSNSの紹介も検討しました。院長は地域の健康講座の情報や季節の感染症への注意喚起を自身のSNSで発信しており、患者からの信頼につながっていました。ホームページの医師ページからそのSNSへ案内を出すことで、医師の人柄と日頃の発信が見える形にしています。ただし、医療広告等ガイドラインの考え方では、患者の受診を誘引する意図があり、医院や医師が特定できる情報は、媒体を問わず医療広告として扱われます。医院として案内するSNSの投稿にも、ホームページと同じ基準を適用すること、患者の体験談を引用しないこと、治療の効果を断定する表現を使わないことを院内の運用ルールとして決め、投稿前に事務長が確認する流れにしました。


医療法人であることも、率先して示すべき情報として扱いました。モデルケースの医院は医療法人が運営しており、正式名称、理事長である院長の氏名、法人としての運営体制と沿革を医院概要のページに明記しています。個人開業の医院と比べて、法人としての継続性や組織的な運営体制は患者にとって安心材料になりますが、書かれていなければ伝わりません。厚生労働省の医療施設調査によると、全国の一般診療所のうち医療法人が開設しているものは45.3%と最も多く、個人開設を上回っています。医療法人であることは珍しい属性ではないからこそ、運営体制まで具体的に示した医院とそうでない医院の差がつきます。
医院概要、医師紹介、各診療ページの監修者表記、Googleビジネスプロフィールの事業者名を同じ正式名称で揃え、運営主体が一貫して確認できる状態にしました。症例についても、個別の患者が特定される記述や治療前後の写真は使わず、診療内容ごとの対応方針と診療の流れという形で医師の経験を文章にしています。
地図検索に対応するMEOとの並行対応
クリニックの検索では、通常の検索結果と並んで地図の枠に表示される医院の情報が、来院の判断に大きく影響します。地域名と診療科目で検索した患者は、地図の枠に出た数院の評価と距離を見比べ、そこからホームページに移動して予約するという順序で動くことが多くなります。モデルケースでも、ホームページの改修と並行してGoogleビジネスプロフィールの整備を進めました。
具体的には、医院名、住所、電話番号、診療時間、休診日、カテゴリ、提供している診療内容、写真、予約ページへのリンクを最新の状態に整え、ホームページの記載と一致させました。写真は外観と受付、待合室、診察室を撮り直し、初めて来院する患者が場所と雰囲気を事前に確認できるようにしています。口コミについては、投稿を促す施策は行わず、寄せられた口コミに対して院長名で丁寧に返信する方針を決めました。医療機関の場合、口コミには患者の体験談が含まれることが多く、それを医院のホームページに転載すれば体験談の広告に当たります。地図上の口コミは患者が自発的に投稿したものとして扱い、医院側で誘導や転載をしないことが、ガイドラインとの関係で安全な運用です。
ホームページ側でも、診療科目の柱ページと医院概要に、地図と経路の案内、最寄り駅からの所要時間、駐車場の情報を載せ、地図検索から来た患者が迷わず来院できるように整えています。通常の検索と地図検索は評価の仕組みが別ですが、患者の目には一つの流れとして見えているため、両方を同時に整えることで初めて予約につながります。
施策後に見えた検索順位と問い合わせ数の変化
ここで示す数値は、モデルケースとして再構成した一例であり、特定の医院の実績ではありません。実際の支援で観測してきた傾向を踏まえた例示としてお読みください。
サイト構造の組み替えと診療内容ごとのページを公開してから約三か月で、地域名と診療科目を組み合わせた検索語での表示回数が増え始めました。それまでほとんど表示されていなかった「地域名と内科」「地域名と小児科」の組み合わせで検索結果の一ページ目に入り、予防接種や健康診断のページは、診療内容と地域名を組み合わせた検索語で上位に表示されるようになりました。半年が経過した時点では、医院名以外の検索語からの流入が施策前の数倍に増え、検索経由の流入全体に占める新規の患者の割合も大きく上がっています。
予約への影響は、流入の増加から一、二か月遅れて表れました。ホームページの予約フォームからの新患予約は、施策前と比べて半年後にはおよそ二倍になり、電話番号のタップ数も同じ傾向で増えています。特に伸びたのは予防接種と健康診断で、これらは季節や年度の節目に検索が集中するため、専用のページを用意していたことがそのまま予約数に反映されました。地図の枠からの経路検索と電話の発信も増え、ホームページと地図の両方を整えたことが相乗して働いています。
| 指標(モデルケースの一例) | 施策前 | 半年後 |
|---|---|---|
| 地域名と診療科目を組み合わせた検索での表示 | ほとんど表示されない | 検索結果の1ページ目 |
| 医院名以外の検索語からの流入 | ごくわずか | 施策前の数倍 |
| 予約フォームからの新患予約 | 基準 | 約2倍 |
| 電話番号のタップ数 | 基準 | 予約と同じ傾向で増加 |
| リスティング広告の予算 | 基準 | 段階的に半分以下 |
こうした変化を受けて、院長はリスティング広告の予算を段階的に減らす判断をしました。一度に止めるのではなく、ホームページ経由の予約が安定して増えていることを毎月の数字で確認しながら、広告の対象キーワードを絞り、最終的には施策前の半分以下の予算に抑えています。ポータルサイトの契約も見直し、費用に見合わない上位プランから基本の掲載に切り替えました。浮いた費用の一部はホームページの継続的な更新に回し、広告を止めても新患が入る構造に置き換わったことが、この事例の最大の成果です。
もう一つ見逃せないのが、予約経路を診療内容ごとに計測する体制が院内に残ったことです。どのページからどの診療の予約が入っているかが分かるようになったため、次にどのページを充実させるべきか、どの季節にどの情報を更新すべきかを、感覚ではなく数字で判断できるようになりました。
支援を担当したコンサルタントが振り返る、クリニックSEOで意識したこと
この支援を担当した私たちSEO Note! Teamのコンサルタントが、進め方を振り返って最初に挙げたのは、施策の前に院長と「どの患者を増やしたいか」を合わせたことです。検索からの流入は、設計次第でいくらでも増やせますが、医院が対応できない患者や、院長が診たいと考えていない診療内容の問い合わせが増えても、現場の負担になるだけです。モデルケースでは、予防接種と健康診断、生活習慣病の継続管理を優先し、対応が難しい領域の言葉は最初から狙わないと決めました。この線引きがあったため、増えた予約が現場の混乱につながらず、院内の協力を得たまま施策を続けられました。
二つめは、医療広告等ガイドラインを制約ではなく設計の前提として扱ったことです。書けない表現を後から削るのではなく、原稿を書く前に「この診療内容について広告できる事項は何か」「限定解除の要件を満たすために何を載せるか」を確認してから執筆に入りました。院内で共有した基準の文書には、次の三点をまとめています。
- 自由診療に当たる内容には、治療の内容と費用、主なリスクと副作用を必ず併記する
- 患者の体験談や治療前後の写真は使わない
- 他院との比較や最上級の表現は使わない
この文書があることで、公開前の確認は事務長が短時間で終えられるようになり、医師の負担も減りました。
三つめは、医師への取材に時間をかけたことです。診療内容ごとのページに書いた内容の多くは、院長が初診の患者に毎回説明していることでした。診察室で繰り返し話している内容をそのまま文章にすると、どこにでもある健康情報ではなく、その医院で受診したときに何が起きるかが伝わるページになります。取材は診療の合間に短時間で複数回に分けて行い、医師の言葉をできるだけそのまま活かしました。
最後に、数字を毎月共有し続けたことです。検索順位ではなく、診療内容ごとの流入と予約数を院長と事務長に見せ、次に何をするかを一緒に決める形にしました。成果が出始めるまでの数か月は不安が大きい時期ですが、表示回数が増え始めている、特定のページの流入が伸びているといった前触れの数字を共有することで、施策を途中で止めずに済みました。クリニックのSEOは、技術よりもこの継続の仕組みが結果を分けると感じています。
クリニックや病院がSEO対策で陥りやすい落とし穴
ここまでの流れは一つのモデルケースですが、支援の現場では、業種の違いを問わず同じ失敗を繰り返しているクリニックや病院を見かけます。代表的な二つの落とし穴を挙げます。
医療広告ガイドラインに抵触しない情報発信を続ける
最も多い失敗は、施策の途中でガイドラインに触れる表現を使ってしまい、修正対応で施策全体が止まることです。医療機関のホームページは、患者の受診を誘引する意図と医院の特定性がある限り医療広告として扱われ、先に挙げた禁止類型はホームページでも同じように適用されます。「最高の医療の提供を約束」の「最高」は最上級の比較表現として認められず、「どんなに難しい症例でも必ず成功します」は医学上あり得ない表現として虚偽広告に当たります。地域の口コミサイトに患者が自発的に書いた体験談は、医院が費用負担などの便宜を図って掲載を依頼していなければ広告には当たりませんが、それを医院のホームページに転載した時点で医院の広告になります。
抵触しないための実務は、公開前の確認を仕組みにすることに尽きます。診療内容のページを新しく作るとき、季節の案内を投稿するとき、SNSで発信するとき、それぞれの担当者が同じ基準で確認できる文書を用意し、判断に迷う表現は医師か外部の専門家に確認してから出す流れにします。ガイドラインは改正が続いているため、基準の文書も年に一度は見直す必要があります。厚生労働省はウェブサイトの事例解説書も公開しており、判断に迷ったときの参照先として院内で共有しておくと、担当者が変わっても基準が引き継がれます。


専門知識のないままの記事量産が招くリスク
もう一つの落とし穴は、成果を急ぐあまり、医療の知識がないライターに記事を大量に書かせることです。症状や病気の一般的な解説記事は、検索する人は多いものの、その医院で受診する理由にはつながりにくく、予約への導線を持たないまま本数だけが増えていきます。さらに、医学的な誤りや古い情報が混ざった記事は、医院の信頼を損なうだけでなく、健康に関わる情報として検索エンジンの評価も下げます。医療の情報は、誰が責任を持って書いたのかが問われる領域であり、監修する医師の関与なしに量産された記事は、その医院にとって資産ではなく負債になります。
避けるためには、記事の本数ではなく、診療内容ごとのページの完成度を目標に置くことです。医院が実際に対応している診療について、医師への取材をもとに、対象となる患者、受診の目安、診察で行うこと、費用の考え方を、患者の言葉で書く。そのうえで、医師が監修者として氏名と経歴を明示する。この形を守れば、ページの数が少なくても、地域の患者と検索エンジンの両方から信頼される医院のサイトになります。記事を増やすのは、この土台ができてからで十分です。
まとめ
クリニックのSEOは、検索順位を上げる技術の話ではなく、広告費に頼らずに地域の患者へ届く構造を医院の中に作る取り組みです。モデルケースで見てきたように、患者の言葉に対応するページ構成、医師と法人の透明性、規制を前提にした発信の基準、地図検索との連動、診療内容ごとの計測の五つがそろって初めて、広告を減らしても新患が入る状態に変わります。
外部の専門家に依頼する場合は、記事の本数ではなく、診断と設計と計測が提案に含まれているか、そして医療広告ガイドラインの限定解除の要件を説明できるかを確認してください。私たちSEO Note! Teamの経験では、この二点を最初に押さえた医院ほど、施策を途中で止めることなく、一年後に集患の構造そのものが変わっています。









